Yayga!

イェイガ!(Yay!+映画)- 叫びたくなるような映画への思いを書き殴ります

『悪の法則』

f:id:yanagiyashujin:20210531101037j:plain

監督:リドリー・スコット キャスト:マイケル・ファスベンダーペネロペ・クルスキャメロン・ディアス/2013年

みなさん、こんにちは。
硬派で知られる当ブログですが、親友のリエコから「イケメン度が足りない」とクレームがつきました。あんたのイケメンて、ペニーワイズとかエディ・レッドメインだからなァ。よし、ならば、こちらのイケメンを拝むがいい。

f:id:yanagiyashujin:20210531101205j:plain

プロフィール:
キャスパー・ユンカー(27歳)、通称ユン様。現浦和レッズ所属のデンマーク出身FW、昨年ノルウェーリーグの得点王&MVP。ステップアップの先として浦和を選び(もっといいとこあったのでは?)コロナを物ともせず来日。初出場から4試合連続5得点を記録し、レッズサポーターのハートを鷲掴む。独身。現在「キャスパー、私(俺)を抱いて(くれ)」と思っていないレッズサポは全体の0.1%を切る。

リエコに紹介したところ、「デンマークと言えば、ホラ、北欧の至宝だとかいう俳優もデンマーク人だったよね。ミッツ・マングローブセンだっけ?」。うっかりさんのフリはやめろ。「セン」が出てくる時点で、ホントはわかってんだろうが!(念のため、マッツ・ミケルセンです)
キャスパーは墨入れまくっていないところも好印象(前回W杯でリエコ、「デンマーク代表にカビキラーかけていい?」と暴言を吐く)。

というわけで、本日はイケメンパラダイス(?)な『悪の法則』をご紹介します。
まぁまぁつまんなかったでーす。ネタばれです!

 


◇あらすじ

若くハンサムで有能な弁護士(カウンセラー)が、美しいフィアンセとの輝かしい未来のため、出来心から裏社会のビジネスに手を染める。そのことをきっかけに周囲のセレブたちにも危険な事態が及び、虚飾に満ちた彼らの日常が揺るがされていく。(映画.com)

リドスコ監督&ノーカントリー(2007年)で知られるピュリッツァー賞作家のコーマック・マッカーシーが書き下ろしたオリジナル脚本。キャストは、ハンサム代表のマイケル・ファスベンダーにセクシー代表ブラッド・ピットハビエル・バルデム、ゴージャス代表ペネロペ・クルスキャメロン・ディアスと揃い踏みである。セクシーとゴージャスの波で溺れそうでした。観た後は寺に行きたくなった。

 


◇哲学問答がつらい

話の筋としては上の通り。主人公の“カウンセラー”(マイケル・ファスベンダー)は弁護士として成功し、美しい恋人(ペネロペ・クルス)と婚約して幸せの絶頂にあった。冒頭は、マイケル・ファスベンダーペネロペ・クルスとベッドの上でジャレ合う幸福なシーンで始まる。そこから友人の実業家ライナー(ハビエル・バルデム)の自宅を訪ね、彼の紹介で麻薬ブローカーのウェストリー(ブラッド・ピット)と会い、麻薬ビジネスの心得を伝授される・・・というように進んでいくのだが、とにかく会話中心でワンシーンが長く、限られた人間関係と現況以外が見えてこない。

一見、無意味なシーンに意味があることは分かる。例えば、マイケル・ファスがペネロペに贈る婚約指輪のダイヤを購入するため、アムステルダムの宝石商ブルーノ・ガンツを訪ねる場面。ここでは、分不相応な宝石を前に彼の虚飾性や見栄っ張りで強欲な性質、裏世界に足を突っ込んだ理由が垣間見えるだけでなく、長々とダイヤについて語られる講釈が映画全体のテーマを示唆しているだろうことは分かるんだ。「完璧なダイヤは全くの透明」「我々は瑕疵を見つけることで値段をつけていく」「長所ではなく、短所を見る」、つまりこの世も同様に、選択・選別の繰り返しだということなんだろう。

とは言え、「長い」「何言ってんだ?」の疑問符が頭に浮かびまくることは否めない。

あと、ビジネス仲間のハビエル・バルデムとブラピね、この二人が出てくる都度、前者は「お前、ホントにこのビジネスやるんだな」「抜けられないぞ」とファスをビビらせるか女のアソコの話をし、後者は「お前、ホントにこのビジネスやるんだな」「甘くないぞ」とファスをビビらせるか女の話をする。始まって一時間、一体マイケル・ファスは具体的にどのようにビジネスに関わっているのか、卸元であるカルテルはどんな組織なのか?など全容が不透明なまま、二人が「やばいよ、やばいよ」としつこく警告してくるって状況、ただそれだけ、何も起こらない。早く起これや。
マイケル・ファスがペネロペとイチャつく⇒キャメロンがビッチぶりをあの手この手で披露⇒バルデムがファスを脅す⇒ブラピがファスを脅す⇒ファスがペネロペとイチャつく・・・と、特に話が進まないシーンが細切れに、更に妙に哲学じみた会話劇により展開されていくのである!ド退屈やで。大体どう見ても柄シャツ成金のバルデムが、急に詩を引用し出すことのちぐはぐさよ。

女性たちに関しては、ペネロペが裏世界に縁のない素晴らしい女性であること、対してキャメロンが如何に危険な香りのする女かを強調し、末路の残酷さをより際立たせるための演出なのだろうが、キャメロンについて車とセックスするだの神父に性事情を告白しに行くだの「悪趣味」の一言で片づけられるエピソードばかり。変態的なセックスの話させときゃ、危険で奔放ってか(ヒョウの入れ墨もあざといしダサい)。

私、あんまりペネロペ・クルスの作品って観ていないんだけど、その中ではそれでも恋するバルセロナ(2008)が良かったんだよね。いっそ、ペネロペとキャメロンは逆が良かったのではと思っちゃうのは安易だろうか。どうしても、キャメロンのカエルのような愛らしい顔が闇社会の女に見えない。『それでも恋するバルセロナ』は結構好きなので、中身と合っていない邦題をなんとかして欲しい。劇中で夫婦役だったハビエル・バルデムとペネロペは実際に結婚したんだよなー(リエコから、『悲報!ペネロペたんがカバと結婚した!』ってメール来た)。

 


◇流石の手腕と言わざるを得ないんだけども

「何も起こらない」、この言葉が脳みそ空っぽな感想だなってことは私も分かっている。「何も起こらない」とガッカリするのは、何か起こる=誰かが死ぬとかドンパチが始まるとかを勝手に期待してのことだものね。で流石に、リドスコが敢えて、全容をボカし、その時の状況をポンポンと配置したことは分かる。そしてそれは、「敵が明確でなくいつどこからやってくるのかわからない」ことと作用して、得体のしれないものが徐々に忍び寄る恐怖を感じさせる効果があると思う。

特徴的なのは、本作にはカルテスのボスのように分かりやすい敵が出て来ないことだ。コカインをバキュームカーに詰める奴、それを取りだす奴、捌く奴、人を殺すように電話一つで命令する奴、金で雇われて人を殺す奴、歯車はそこら中に配置されている。前半の会話の中に思わせぶりに登場する「動き出したら誰にも止められない」ボリートという処刑器具は、この無機質なシステムからは逃れようがない男たちの運命を示していて、さらに誰よりも用心深く振る舞っていたはずのブラピが、その道具の犠牲になるという皮肉。

あるカルテルのメンバーにマイケル・ファスが言われる「すべてはお前の選択だ」。ブラピは、わずかな気の緩みが原因で命を落としてしまった。マイケル・ファスの過ちは、成功を収めながら欲を掻いたこと、そして選択の失敗は表の職業で扱った事件を軽視しやるべきことを怠ったこと。ほんのわずかなミスだった、まるでダイヤについた傷のように。だが、その微かな傷に偶然と不運が重なることで致命傷となる、常識の通用しないシステマチックな世界に足を踏み入れる選択をしたのも彼らだった・・・。

 

ってまあ、そんな感じ。マイケル・ファスに起こったある不運から、前半の点が繋がれていき布石を絡め取って、緊迫感に満ちた展開に持っていくのは流石の手腕と言わざると得ない。得ないんだけど、「それだけかぁ」って思ってしまった。そして、キャメロンがやたらと繰り返す「I'm starving」(当然、肉だろう)のせいで、「私は野菜が食べたい」ってなった。

例え後半で上手く回収されたとしても、私は前半の無意味な時間を恨む。例えばカメラを止めるな!(2017)で真相が明かされ「ああ、そういうことだったのね!!」とスッキリしたとして、だからどうした?って思ったでしょ。無意味な画面は無意味な画面だ。後で意味を説明されたからって、その時点で無意味だったことに変わりはないじゃないの。

リドスコは、前作の『プロメテウス』(2012)といい『エイリアン: コヴェナント』(2017)といい、妙に哲学に触れていたが、もうこっち方面で行くのかね?

引用:(C)2013 Twentieth Century Fox.