Yayga!

イェイガ!(Yay!+映画)- 叫びたくなるような映画への思いを書き殴ります

『ダークナイト』

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 監督:クリストファー・ノーラン キャスト:クリスチャン・ベールヒース・レジャーマイケル・ケイン/2008年

本日は映画レビューではなくダラダラした駄文です。アメコミ映画を観たのが初めてなんで、笑って許して下さい。
先日、映画好きの異常な友人S氏から「AMUG(反マーベルシネマティックユニバース組織)に入らないか?」とメールがありました。

氏曰く「誰が何をどのように撮ったかの部分があまりに稚拙で、近い将来AIがフルCGで自動生成しても観客は有難がって観に行き続けるんじゃねーの?と末恐ろしくなる。シリーズが続くこと、世界を共有するキャラクターが増え続けること、マーベルの戦略は大成功なんだけど、誰が監督しようが脚本を書こうが、見たいものと見せたいものが予め決まってるんだから作家性なんて皆無。よく言えば全編サービスショット。製作者とファンが目配せし合った、『見たかったのこれだろ?』な映像が延々と続く。そんなお遊戯をオレは観ていられなかった」。
 
相変わらず前提説明が不足しているのですが、彼は恐らくアベンジャーズ/エンドゲーム』を観たのでしょう。そして、何かしら憤懣遣る方無い思いを抱いたのでしょう。
どうでもえー。ああ、いい天気だわあ、毛布干したい。
 
毛布を干してたら、またメールが来た。
「ノーランのことをディスったりもするけれど、ダークナイトを観直したら、とても感動したよ」。なぜシネフィルどもはノーランをディスるのでしょう。真面目な監督だと思いますが。私にはよくわからない何かがあるのでしょう。
 
早く毛布を干したい私は「わかりました、AMUGに入ります」と折れ、S氏「じゃ、まず『ダークナイト』を観てくれ。バットマン ビギンズは観ないだろ?前にDVDをやったが観る気配すらないもんな。あとで『ダークナイト』を観る前に知っておくべきことのレジュメを送る」。
 
後ほど送られてきたものはA4用紙4枚に渡る情報でした。絶対仕事中に作ったな。
 
 
◇『ダークナイト』を観る前におさえておきたい二、三の事柄(By S)

【ブルース・ウェイン】クリスチャン・ベール

バットマンことブルース・ウェインはコウモリのコスプレでゴッサムの悪と戦うパラノイアである。(中略)父母を殺した犯人を射殺しようと試みて、幼馴染レイチェルに思いきりビンタされ(2回)、そのショックで世界を放浪する。ケン・ワタナベ・ ニンジャスクール(講師リーアム・ニースン)にて鍛錬をつむも、彼らの野望を知り、ニンジャスクールを壊滅させる。コウモリの姿となり、犯罪都市ゴッサムの浄化に乗り出す。

 
【ジェームズ・ゴードン】ゲイリー・オールドマン
ゴッサム市警の警部補。 バットマンによる超法規的活動を陰ながら支援(黙認)する。コカイン常用者の、麻薬取締局捜査官とは別人。好きな映画に『ショーシャンクの空に』と『レオン』を挙げる人間は要観察。ここに『ダークナイト』を足してもいいなと思う今日この頃。
 
【レイチェル・ドーズ】ケイティ・ホームズマギー・ギレンホール
 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のジェニファー、『ツインピークス』のローラ・パーマーに次ぐ、「お前、誰だよ」と言いたい配役変更。ブルースの幼馴染で検事、バットマンの正体を知る一人。ブルース(パラノイア)に重度のストーカー気質を見出し、相当な距離を置いている。
 
【アルフレッド・ペニーワース】マイケル・ケイン
ウェイン家の執事でありブルースの良き理解者。ブルースの夜警活動に時折嫌味を交えつつも全面的に支える最大の功労者。バットマンの正体を知る一人。すぐにいじける。
 
【ルーシャス・フォックス】モーガン・フリーマン
ウェイン産業の社員。ブルース復帰後は共同で数々のひみつ道具を開発、ウェイン産業の社長に就任する。バットマンの正体を知る一人。暴走する御曹司をたまに諫める。
 
【ジョーカー】ヒース・レジャー
 『バットマン ビギンズ』はラスト、ジョーカーの存在を匂わせて終了する。『ダークナイト』の評判から遡って『ビギンズ』を観た人、あるいはコミック『バットマン:イヤーワン』を読んでいる人にとっては味のあるラストとなっている。
 
かくして、アメリカにおけるヒーロー映画、アメコミ映画の流れを一作で変えてしまった本作は多数の意識高い系のファンを同時に獲得し、『ダークナイト』を語る奴はメンドクサイという評価まで得てしまうが(以下略)
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ごめん、よくわからなかったんだけど、これ大丈夫ですか。『ダークナイト』を観る前に知っておくべきこと。ホントにこれで大丈夫ですか?
 
 
◇序章
冒頭、なかなかピエロな野郎たちが銀行強盗を行い、親玉ピエロがスクールバスにて逃走。どうやらこいつが今回の悪玉菌のようだ。ところ変われば、悪そな男たちが麻薬取引を行う現場を、バットマンが襲撃。ほほう、これが噂のバットマンね。バットマンが主犯らしきズダ袋を被った男をとっ捕まえた。なんでズダ袋かぶっとるねん、アホか。バットマンがその顔から袋を取ると・・・。
 
 
ん??
中からキリアン・マーフィが出てきた。
 
 
キリアン・マーフィ出てんの??雰囲気的に前作から出てたっぽいんだけど、私がキリアンLOVEだって知っているの?
 
それを言えよ。
A4四枚も送ってきて、肝心要の情報書いてねぇじゃねーか、バッキャロー!人を変な組織に誘う前に「キリアン・マーフィ出てますよ」だろ、必要な情報はよォ。そろそろ自分の言いたいこと言うだけじゃくて、こっちの趣味に合わす技も覚えろ、いい歳こいてよォォ。
 
 
失礼しました。
というわけで、ここで『ダークナイト』を中断して『バットマン ビギンズ』から観直しました。
時間をムダにしたぜ、バッキャロウ。
 
 
◇改めまして、鑑賞後
二作とも面白かったし、ノーランの印象を裏切らない出来だった。つまり、とても真面目に撮られているなあ、って。

まず、設定のシンプルさが好きだな!市民たちが昼夜、マフィアに怯えながら暮らす犯罪都市ゴッサムシティ。具体的な脅威はよく分からんのに、マフィアの面々のギャング顔で、とにかく悪が蔓延っているのだ!と押し切る。それを自らの恐怖の象徴であるコウモリの姿に扮したダークヒーローが切る、爽快な単純さ。
 
バットマンは暗躍型ヒーローなので、当然ながら夜のシーンが多いが、夜の街の雰囲気が素敵である。聳え立つビルの威圧感、ビルとビルに挟まれた路地の昏さと暖色の灯り、それを反射して、てらてら光る地面。「う~ん、ゴッサムといった雰囲気。
 
特に『ビギンズ』では、高層ビルとその隙間を利用した高低差による、奥行きある映像が気持ちよい。ひみつ道具の一つである昇降ワイヤーを駆使し、バットマンが一気に上空へと消えるときの疾走感。マフィアのボス、ファルコーニをとっ捕まえたあと、ホームレスのおじさんに「ナイスコートと一言放って飛び立つシーンはめちゃめちゃカッコいい。そのコートが、バットマンになる以前に自身が渡したものである細かな工夫も楽しい。
 
 
◇脚本と演出

意外だったのは、キーワードの反復や言葉の掛け合いが凝っていて面白かったこと。

例えば、アルフレッドの「ネバー」(=「決してブルースを見放さない」)や「人はなぜ落ちるのか?這い上がるためです」のワードの反復。フォックスがメモ一つで自分をクビにした社長に返す「メモを見ていないのか?」のブーメランであったり、バットマンの車を追う警官たちの「どんな車種なんだ!?」→(バットモービル、爆走で通りすぎる)「…ああ、いま分かった」とかね。 
要所で繰り返して登場するパワーワードが、前回の状況を踏まえた上でこそ光る、丁寧に上塗りされたみたいな脚本だなあと。
 
関係ない人々を巻き込んで、ちょっとした笑いを誘う演出なんかもいい。精神病院の個室のドアをサクサクと爆破し、「失礼」と通り過ぎるバットマン、反応できず見送る患者。自爆寸前のバットモービルを、パン片手にポカンと見つめるおじさん。
インディ・ジョーンズ』なんかも、よく関係ない人民を巻き込んでは迷惑をかけるが、バットマンは迷惑をかけない点で、悲壮ぶっててもやっぱり御曹司なヒーローよねー。
 
みません、上記ほぼ『ビギンズ』のシーンだったわ。
 
ダークナイト

ダークナイト』では、さらに脚本や演出に気合を入れたのだろうことが分かる。二本映画を作れてしまうのではと思うほど、よく言えば盛りだくさん、悪く言えばてんこ盛りな内容。

 

正義と悪との境界線について、人を傷つけずに自分の信条を貫くのが正義、罪に手を染めれば悪へ堕ちる図式は、様々な映画や小説で描かれてきたものと同様なのだが、バットマンが面白いのは、彼はそもそも高潔な人間でないので、堕とす対象でないところ。反面、『ダークナイト』で登場する正統型ヒーローのハービーは、あまりに清廉潔白な好人物ゆえ、悪のアンテナにビンビンに引っかかるのも至極当然。

 
そこで宿敵ジョーカーの登場となるわけだが、なるほど、バットマンは己の内の恐怖と精神的な戦いを繰り返しているが、ジョーカーはその具現化した姿というわけだ。互いに互いを殺すことができない二人の関係性は、正義と悪は表裏一体であることを示す。
 
ジョーカーがあまりにベラベラと喋るので食傷気味になるのが否めない。寡黙なバットマンと、背中合わせの存在であると理解はしつつも、人は得体の知れないものに恐怖を抱くのであって、言葉を聞けば聞くほど純粋な意味での恐怖心は薄れていくもの。
 
銀行強盗して爆薬しかけて、要人暗殺のためにバズーカぶっ放してマフィアの金焼いて、病院を吹っ飛ばしてまた船に爆弾しかけるとは、なんてまあ忙しい勤勉な悪党だろうと、むしろ健やかさを感じてしまった。ただ、ジョーカーの役作りのためにヒース・レジャーが心身を追い込んだというエピソード、また映画公開を待たずに亡くなったことを考えたとき、「ヒースにとってのジョーカー」には空恐ろしさを覚える。
 
 
◇サスペンスてんこ盛り
後半は、恐らく本来シリーズのテーマである恐怖との対峙、正義と悪の定義の話に加えて、サスペンス色ミステリー色がより濃くなっていく。
同時に別の場所に監禁されたレイチェルとハービーの、どちらを助けるのか。だが、ジョーカーが告げた彼らの居所は本当に合っているのか。
更に、攫われたゴードンの家族の運命は?爆薬を仕掛けられた船二隻の乗客はどのように行動するのか?警察内のスパイは一体誰だ?といったサスペンス&ミステリーが次々と畳みかけられる。
 
この盛り上げ具合が、若干うるさいなと感じるが、ただ、ハービーの高潔な信念が確かに人々に受け継がれたとするラストには素直に感動した。これまでのハービーのキャラクターのおかげで僅かな希望が見える結末となったし、一方で彼が耐えきれず悪に堕ちてしまった事実が、このシリーズらしくダークな雰囲気を盛り上げる。
 
ホワイトナイトの堕天により『ダークナイト』が誕生するキレイな展開に、なるほどね、なるほどね〜と(ダークナイト=「暗い夜」だと思っていた)ヒーロー映画で、こんなに忙しく気持ちを上下させられたり、練られた脚本に感心したりするとは思わなかった。
 
 
◇ツボ
笑いの要素も多かったので、以下に個人的にツボだった箇所を挙げます(全部『ビギンズ』からです)。
 
1)バットモービルが思ったより無用の長物
 
いやカッコいいよ、バットモービル。でも、精神病院からレイチェルを助けだした後、パトカーとカーチェイスするシーンで、全然パトカーを振り切れないのには笑った。バットモービルの走りだけ見るとものすごいスピード感なのに、次のショットでは「フォンフォーン♪」ってパトカーにピッタリ張り付かれてるんだもん。挙句ヘリコプターに追跡されているのに、屋根の上を爆走する。丸見えだよ。
 
 
2)おかしくなっちゃったクレイン博士(キリアン)
 
己が恐怖するものの幻影を見る毒ガス(自分が作った)を浴び、プッツンしちゃうキリアン。こういう役が似合うのよね、結局・・・。正気を保てなくなった博士が、現実逃避に走った結果がこれだ。
 

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留守番電話になっちゃった!
  
その後は「かかし、かかし」とブツブツ呟く。

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あーん、かわいい。
 
 
3)マフィアのボス、ファルコーニの顔
 
おじいちゃんにしたいナンバーワン、マイケル・ケインの少し歯を剥き出しながらの「ネバー」もいいんだけど、ファルコーニはんが思いの他、ステキなお貌で。スケアクロウを脅したことで、やっぱり毒ガスを浴びせられちゃったファルコー二はん。
恐ろしい幻影を見て「ファーーー!」と叫ぶ顔が非常にいい。
 

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ファーーー! この愛玩動物感。

 

本当は『ダークナイト』の感想だったのですが、ほとんど『バットマン ビギンズ』の話になってしまいました。
結局私はAMUGに入っていません。まあ、入ってないことをS氏には伝えてないけどね。誰
か入りたい人がいたら、連絡くださいな。
 
ファーーー!