Yayga!

イェイガ!(Yay!+映画)- 叫びたくなるような映画への思いを書き殴ります

『寄生獣』『寄生獣 完結編』

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監督:山崎貴 キャスト:染谷将太深津絵里/2014年、2015年

 
先日、夫が「はい、おみやげ!」となんかくれたのですが、またわらび餅でした。しょっちゅう、わらび餅を買ってくるのです。本人は自覚がないらしく、思わずまたかと呟いたら、「久々だろ!?」と憤慨していました。こちらも慌てて、「わらび餅、大好き」と、「ハズキルーペ、大好き」っぽく取り繕ったのですが、「うるせえ」と抓られた(ハズキルーペのコマーシャルって関東だけじゃないよね??)。
 
でもねー、なんなら二週間に一度くらい買ってくるんじゃない?他にも、葛切りとかあんみつとか、透明でつるつるしたもんばっか買ってくる。そんなに頻繁に買ってきてない!と言い張るけど、ほらそろそろ記憶力も脳もさ、退化とか。。。
 
ほ、本日は脳つながりで『寄生獣』の感想を書きます!
 
かれこれ20年の付き合いになる友達から、昔お勧めと貸してもらった漫画が『寄生獣』でした。興味が湧かず積んどいたら怒られ、読んでみたら夢中になりました(そのことを今でも言われる)。ただ、記憶がないです。なので、原作未読と同じ状態になります。
 
◇あらすじ
ある日、人間の脳を乗っ取って肉体を操り、人間を捕食する「パラサイト」と呼ばれる寄生生物が出現。平凡な高校生活を送っていた泉新一も、一匹のパラサイトに襲われる。しかし、新一の脳を奪うことに失敗したパラサイトは、そのまま右腕に寄生し、自らを「ミギー」と名乗って新一と共生することに。パラサイトと人間とが殺し合う事態が発生。新一とミギーもその争いに巻き込まれていく。(映画.com)
 
新一がミギーとの共同生活に四苦八苦する一方で、市長の広川北村一輝ら一部寄生生物たちは、市役所を根城にコロニーを形成し、餌となる人間の供給システムの構築に動いていた。化学教師として新一の学校に入り込んだ田宮良子深津絵里は、コロニーのリーダーながら異質な考えの持ち主で、人間との「共存」つまり人間を捕食せずに生き延びる方法を模索していた。彼女は新一に興味を示し、度々接触を試みる。
 
ここに刑事國村隼や記者倉森大森南朋、新一の母余貴美子、同級生の里美橋本愛らが絡み、お母さんが死んだり同級生に慰められたりと、ドラマティックな展開が絡む仕様となっております。
なお、寄生獣』『寄生獣 完結編』に分かれていて、約4時間の長丁場です。知ってたら観始めなかったのに。
 
◇ちょっと褒めます
私はCGなどの映像技術に詳しくないが、新一の右手がミギーになったり、この二人が戦う何体かの寄生生物の頭がカパッと割れる映像は楽しかった。特に東出昌大演じる転入生の島田が、正体がばれて美術室で生徒たちを殺傷するシーンは、(そこまでが退屈だったこともあり)結構な迫力だ。酸性の薬品を浴びせられて制御不能になり、ぐにゃぐにゃと形を変えながら暴れる場面は見応えがある。
 

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どう頑張っても高校生役はキツかった東出氏

しかし、この寄生生物が割と脆い。負傷すれば再生できないし、頭がカパッと割れた後に繰り出される触手のような凶器は、そのスピードと殺傷力は脅威だが、それ以外は何ら超常的な力を持たない。また、個体差はあるものの、どうやら凶器が伸びる距離にも限界はある。

 
なので、校内を暴れ回る東出を、新一が離れたビルから弓で射たのは理に敵った攻撃方法だったし、あのシーン、カッコよかったよね。「なんで弓やねん」と突っ込んでいる人もいるようだけど、いつブンと伸びてくるかわからん凶器を回避するには、きっと遠隔攻撃がベストだ。よく覚えておいて、奴らの攻撃の間合いに入ってはいけない、逆に言えば距離さえ保てば倒せるからね。
 
◇でもさ
「アイディア次第で倒せない敵ではない」という点は、人間との戦いを面白く描ける良い材料だと思うのだが、残念ながら、それを活かした展開はほぼない。
 
人間側が反撃に転じる『完結編』では、いかにも物々しい特殊部隊が登場するが、彼らの採った方法は、市民を集めて一人ずつスキャナの前を通過させ、寄生生物と判明したら「こちらへどうぞ」とバスで囲い込んだ空間に誘導、一匹ずつ駆除するというもの。
 
日が暮れる。
 
また「固定されたスキャナの前を通らせないとわからない」非効率的な検知システムなので、パニックになった人々が逃げ出した途端に機能しなくなってしまう。そして危険を察知した寄生生物が暴れ出し、隊員の一人が身体を分断される。 
言ったよね、さっき、「間合いに入っちゃだめ」って言ったよねえええ。
 
固定式スキャナの無力化を知った特殊部隊隊長豊原功補「移動式スキャナを用意しろ」と命令。あ、移動式スキャナなんてあるんだ・・・
 
 
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お前かよ。
 
なぜか寄生された人間を見破ることができる、新井浩文容疑者×たった一人が、特殊部隊の秘密兵器、名付けて「移動式スキャナ」である。
こいつ自体信用できない変態野郎なのに(いや、劇中の話よ)、その「この人間は寄生生物だ」との言だけを頼りに街中で銃をぶっ放しまくる、強硬手段と呼んでは褒めすぎな行き当たりばったり作戦。特殊部隊の使い方間違えてるでえ。
 
なんかもっと、ないの?彼ら、人間を食べたいわけじゃない?それに、できれば周囲に正体バレたくないわけじゃない?ここなら餌に困らないと誘い込むような罠かけて、どっか村でも一箇所に集めて、爆撃するとかさ。実行部隊の前に、ブレーンが必要だよ・・・。
 
それと、染谷将太が、たまになぜか髪を耳にかけるんだが、女の子にしか見えないのでやめて欲しかったです。
 
◇さらにけなします
序盤の中華屋や東出IN美術室のシーンなどは好きなのだが、それは他が退屈なせいで、「あ、やっと画面が動くぅ」といった息抜きの意味でもあるよね。
 
何が退屈って、深津絵里演じる田宮良子の見た目、スローな喋りと動きが。やたら出番が多く(長いからか)、映る度にゆっくりと喋ってゆっくりと動く。緩慢な上、終わってみれば大したことを言っていないので辛い。私の周囲では深津絵里の評価は高いが、個人的にはそれほど好きな女優ではない。化学教師として登場するシーンでは、生徒たちが「マジかよ」「すげえキレイ」とざわめくのだが、そうけ?高校生が色めき立つほど綺麗け?あそこはむしろ、びっくりするほど酷い映りだったと思うが。
 
またもっと退屈なのが、市役所コロニーの面々の、結論が出ない会話シーンだ。誰かが「ミギーと泉新一は危険だ」と言い、田宮が「実験のため生かしておく」という。この会話が、何回も繰り返される。後半中盤になっても、まだやってる!どっちか結論出して、この会話をやめてくれ。
 
そもそも田宮先生の実験好きは異常だ。新一らはサンプル、出産と子育ても実験だというが、要は単なる個人的な興味に過ぎない。コロニーへの貢献に結びついていないしね。だれかそろそろ進言しないかな、新一とミギーとっつかまえて解剖した方がよっぽど実験だぜって。脅威は排除できるし特殊事例のデータは手に入るしwin-winだぜって。
 
また田宮はコロニーのリーダーでありながら、「実験」に感けるあまり、メンバーを掌握できていない。田宮が目指すのは、人間以外のものを摂取して生きること→人間との共存だ。だが、ラスボスとなる後藤浅野忠信は、「この種を食い殺せ」言いながら、ナイフとフォークで人間の肉を食べとる。忠信め、『ハンニバル』のマッツ・ミケルセンを意識しとるな。
市長の広川は、後に判明するある理由から、人間は滅びるべきと思っている。
十人十色すぎじゃん。個性は尊重するが、事情が事情なんで、ある程度は同じ絵が描けていないと内部崩壊が起こると思う。
 
◇みんな語り部
監督は「人間とはなにか」を描き出したかったらしいが、4時間をかけた割には、
 
・人間は罪深い存在である=豚、鳥、魚など他の種を犠牲にして生きている&ゴミを垂れ流し森林を焼き、環境を破壊している
・しかし偉大な存在でもある=母性、他者への愛情を持つ
 
と、古今東西語りつくされてきた「人間」をなぞっただけであった。もうよくない?人間の罪深さを「他の動植物を食べる」行為で、人間の素晴らしさを「感情を持つ」ことで示す、その表現方法に飽きた。なんか別の方法を考えてくれ。
 
さらにキーパーソンたる実験大好き田宮先生が出した結論はこれだ。
 
「人間に比べれば、私たちはか弱い存在だ。いじめるな」
「私達と人間は家族だ、私達は人間の子供だ・・・」
 
ごめんなさい、ちょっと意味がもう。
あと、全体的に音楽がうるさいですよね。
 
途中から田宮は「人間を甘く見るな。追い詰められたり、集合体になった人間は恐ろしい」と人間を過大評価しだす。彼女の言葉を裏付けるものとして用意されたのが、特殊部隊による殲滅作戦と、田宮に利用された記者倉森が彼女の赤ん坊を誘拐するシーンだ。殲滅作戦は先ほども書いた通り日が暮れそうで、とても集団の恐ろしさを見せつけるようなものではなかったし、記者が田宮の赤ん坊を人質に取り、公園に呼び出すシーンの、わざとらしさと間延び具合がすごい。
 
公園に行ってみたら、記者はめちゃめちゃ姿を晒している上に丸腰だった。田宮にとってはこの段階で、人目を避けつつ赤ん坊を取り戻すことなど屁でもない。しかし相変わらずスローな喋りと歩きで記者に向き合う。そのうち警察や新一が駆けつけ、衆目に晒された状況となってしまう。このわざとらしい舞台作りが鬱陶しいのである。
 
赤ん坊を抱えて喚く記者に、冷静に対応する田宮。なるほどなるほど、田宮にしても、騙した記者に対し罪悪の気持ちがあるのかもしれないし、彼の「父性」を尊重して、殺さずに済む方法を探っているのかもしれない・・・。
 
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ブッスー。
 
殺すんだ。
だったら、最初に殺しておかんかい。
 
田宮の正体を見た警察は一斉に発砲。赤ん坊、赤ん坊いるよー!?状況判断して!お前らは韓国警察か。
そんな状況なのに、田宮がまた語り始める。音楽うるさい。言葉が耳に入ってこない。
 
場面転換し、今度は特殊部隊に囲まれた市長広川が語り演説を始める。
「殺人よりもゴミの垂れ流しの方が重罪だ!」。
あ、そっち派なの?
つまり環境破壊を憂いて寄生生物側についた、覚悟を持った人間、それが広川だった。
しかしここまで広川は、意思を示す言動一つ見せたわけではなく、「田宮さんが反対している」「田宮さんのおかげです」と田宮に阿る、
まさに田宮のオンブズマン
 
突然「ゴミの垂れ流しが」などと言われても、「あ、それはいかほど前から・・・?」と戸惑うしか反応のしようがない。演説ぶったものの、特殊部隊に速攻殺される。なお、殺してみたら彼は寄生されていない人間だった(じゃあ、なんでミギーがそれを見破れなかったんでしょうかー)。
 
死んだ広川を見て、彼が寄生生物だと嘘をついたスキャナ新井浩文は「そいつ、どう見ても人間じゃん」と大爆笑。
 
???お前は何がしたいわけ?
 
広川が死ぬと、特殊部隊の前にラスボス後藤こと浅野忠信が現れ、「この種を食い殺せ」。あ、あーたはそっち派だったっけ。共存だの、環境破壊が罪深いだの、全滅しろだのもう色々言われて、かなわんわ・・・。
 
一旦、公園の深津ちゃんに戻ろう。死にかけてるし。
まだ語ってる!さっさと死ね。音楽うるせえ。
 
田宮は実験結果も発表せず、赤ん坊を新一に託して死んでしまう。
あとはもうどうでもいい。ラスボス忠信との戦いは、なぜかゴミ集積場に場を移し、バイオハザードのような雰囲気。今度は忠信がなんか語ってる。どいつもこいつもよく語るな。音楽うるせぇ。忠信が何言ってるか全然頭に入ってこない。
 
忠信をあっさり倒し、平和な日常を謳歌する新一と里美。しかしみんな忘れてただろうが、厄介な奴が残っていた。
そう、移動式スキャナ新井だ。
彼は里美を羽交い絞めにして攫っていってしまう。めちゃめちゃ人通りの多い繁華街で。もう監督も長丁場すぎて、どうでもよくなったらしい。
 
追いついた新一に、スキャナもまた、なんやかんやと自分の種としての正当性を語りだす。
みんな、新一への承認欲求が強すぎ。
新一の承認キャパ超えてる。
 
スキャナが最後どうなったか、本当に忘れた。
 
この映画観て、「やっぱりピエール瀧の顔って悪辣だよね」「東出の高校生役はつらい」「染谷、髪を耳にかけるな」「阿部サダヲってどこに出てるのかと思ったらミギーの声だったん!?」など語るのはいいけど、「人間て罪深い・・・」「忠信(あるいはスキャナ新井)の言うことにも一理あるよ」とか言い出したらアホだと思うよ。
 
あと、音楽うるさい。