Yayga!

イェイガ!(Yay!+映画)- 叫びたくなるような映画への思いを書き殴ります

『ピース オブ ケイク』

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監督:田口トモロヲ キャスト:多部未華子綾野剛/2015

インフルエンザでひどい目に遭いました。ひどい目に遭っているのに、私のブログに対して、弟から、そしてブログタイトルをネーミングしてくれたN氏から「もっとメジャーな映画を書いたら?」と同じことを言われました。メジャーな映画って、何かね?

ラインナップがおっさんくさいとも言われるし、松坂桃尻の流れから友人リエコに観るように言われたこともあり、『ピース オブ ケイク』というキュートでオシャレそうな映画を鑑賞。リエコさんは綾野剛も好きで、あのルパン三世すら観ているファンの鑑なんやで・・・。松坂桃李にも綾野剛にも、取り急ぎキュンキュンしないが、まあいいや、とにかく私をキュンキュンさせて!

 

◇あらすじ 

仕事も恋愛も周囲に流されるまま生きてきた女性・梅宮志乃。バイト仲間との浮気がばれたことで、DV体質の恋人・正樹からは振られバイトも辞めることに。このままではいけないと心機一転した志乃は家を引越し、そこで出会った隣人で、新しいバイト先の店長でもある男・京志郎に本気の恋をする。しかし、京志郎には同棲中の恋人がいて・・・。(映画.com)

まず、

多部ちゃんがかわいい!

か否か論が世には溢れている。ググれば「ブス界最強の美女」などと気の毒な呼び方をされ、かわいいと思うかどうかで投票まで行われている始末。そもそも映画の評で、○○ちゃんがかわいい~といわれてしまうことは女優さんにとって不本意だろうに、これまで優等生役の多かった彼女がキスシーンやベッドシーンを披露したことで、一皮剥けた大人の多部ちゃん!のような軽い意見も多く。そもそも何でみんな当たり前に「多部ちゃん」と呼ぶのだ?だったら私は多部さんと呼ぶよ!

多部さんの役所は、恋愛も仕事も、自分の意志なく成り行きに任せては失敗をしてきた女の子。飽きっぽさや物への執着のなさは、植物を買っては枯らしてしまうクセにも表れていて、そのような自分に嫌気がさし、心機一転、人生を立て直そうとしている。

かわいいか論はさておき、まず私には、多部さんがビジュアル的に、役柄とは正反対の良い子に見えてしまう。一度買った植物は枯らさずコツコツ育て何なら株分けまでし、高校時代から7年付き合った彼氏がおり、毎日節約自炊しているようなコ。なので、この子はダメな子この子は恋愛にダメな子、と自分に言い聞かせないとならなかった。

また多部さん始め、登場人物が揃って身体が貧相なのが寂しい。多部さんと菅田将暉のキスシーン、エロいですか?マジですか。

 

日本の映画は、今や漫画や小説の原作ありきで、それもある程度の人気作をベースにしていないと出資がされない状況にある。観客は非凡なオリジナル脚本の登場を望むが、売れるかどうか分からないハイリスクな物には誰も金を出さない悲しい現実。失敗してもいいから好きに表現してみろなんて剛毅なパトロンが生まれるには、日本の景気がよくならないといけないのでしょうねえ。
原作漫画は未読だが、まあ漫画に忠実に作られたんだろうなと予測する。それにより、いかにも不格好なシーンが生まれている。
例えば、多部さんがアパート隣室の綾野と縁側で顔を合わせ、恋の予感を感じるシーン。「そのとき風が吹いた」と脳内で呟く。本気で男を好きになったことがなく、相手に流されるままの恋愛をしてきた女性が、初めて直感で人を好きになる。晴天の霹靂的体験を比喩しての「風が吹いた」なのだが、しかし、このシーンではホントにサアーッと風が吹く。その風を、綾野が目を閉じて気持ち良さそうに顔に受ける。物理的な風なんだ?心に吹いた恋の風じゃないんだ。またそれ以前に、このときの綾野の笑顔が、どう見ても「風が吹いた」顔でないのも問題だ。 

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ニッカー。もう少し微笑でお願いします。どちらかというと風が止むぞ。

 
◇無理やり不幸感

映画に共感は基本不要と思うが、今回のようにターゲットが限られる映画では、それなりの共感は必要だろう。映画と言っても様々だし、例えばスピルバーグとこの映画を、同一の媒体を介しているからといって、一つに括るのは土台無理だし。この作品では、主人公は観客に嫌われては意味がなく、適度に不幸に共感させ、応援してもらえるキャラクターであるのが理想だ。しかし、いかにも現代で好まれそうなステータスが、彼女を不幸に見せない。
店主が愚痴を聞いてくれる馴染みの店がある。ズバズバ物申してくれる親友やオカマの友達がいる。またこのオカマときたら、容姿は美しくクリエイティブな仕事を持ち、主人公に優しく寄り添い、時に厳しく背を叩いてくれる。恋愛関係になりえない&女特有の揉め事が発生しない点で、最強の味方じゃないか。行きつけの店や良き理解者の存在が、主人公のステータスとなっているので、「恋愛がうまくいかないー、仕事続かないー」と嘆いても、人生に迷う女性の切実さがないのだ。なので、世の感想は「綾野(or菅田or松坂)カッコいいー」「多部ちゃんかわいいー」「主人公が身勝手」など数パターンになってしまうのかなと。

このオカマの友達が、本日メイン(?)の松坂桃李氏で、美しくコミカルでよかったし、何なら少し桃李ファンになりかけてきたが、上記の通り役柄はステレオタイプ。桃李さんにはいつか、停滞したド田舎を舞台に、自分の色恋にひっちゃかめっちゃかになってて金に汚くて、こいつよりはマシだと主人公を浮上させる存在としてのオカマとか、それくらいのオカマに挑戦して頂きたいものである。

 

◇綾野はレッドカードか 

無理やり不幸と言えば、一度はカップルとなった多部さん&綾野が別れる理由である。

そもそも、綾野、そんな悪いことしたけ?

芸術肌の元カノが精神壊して放っておけず、度々訪ねては、情に流されて関係もしていたらしい。でもこの二人が完全に終わっていないことを承知で、間に入ったのは多部さんである。綾野は優しい男で、ああいう男の優しさは他にも等しく向けられるものなんだ。彼の失敗は、持ち前の優しさを完全に切れてはいない元カノに分けたことくらいで、まあサッカーでいうならイエローカードレベル。しかも謝る綾野を、多部さんが断ち切って別れる。つまり、多部さんが自身の弱さに潰され、まずは自立しようと決意して選択した別れなのよね。え、違うの?

なお、二人で出かけた温泉で、綾野の携帯を見た多部さんが元カノとの密会を知り、男湯に殴り込むシーンは、フラガールと重なるが、松雪さんの方が怖い。

そんなわけで一年後、二人が偶然の出会いを果たしたとき、好きな仕事を軌道に乗せた多部さんは、堂々と彼に向き合うのだろうと思った。瞬間、突然の逃走。えっ。

追いついてやり直したいと迫る綾野を、「無理だって!同じことの繰り返し」と拒む。

ですから、綾野のファウルはイエローレベル、二枚溜まればアウトだが、まだ一枚。一発アウトのレッドではないんだ。なぜ多部さんが、犯罪者のごとく彼を拒むのか分からずに混乱する私のあたま。エ、タベサン、アナタ、ジリツ必要でワカレタ。そして、イマ、ジリツシタ。モンダイ、カイケツシタ(混乱中)。

さらに、今までは恋と同様枯らしていた植物は、綾野の手により庭に植え替えられており、「見ろよ、こんなに育っちまったよ!」と示す先には、大振りすぎる植物がワサワサと生え盛っている。この恋がこれまでと違って実る可能性のあることを示す植物にしては、サトイモに似ている・・・いやいや、刮目せよ、この恋の生命力!

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(C)2015 ジョージ朝倉祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会

見よ、サトイモの生命力!

良かった部分と言えばまあ、劇団の座長をやった峯田和伸さんかな。歌うところよかった。いや、本職じゃん。。峯田さんに歌わせたいがための起用じゃないの?

最後は、大嫌い!と叫びながら綾野に抱きつく多部さんにサブイボ、いや鳥肌、いやいや、あ、あ、愛らしい~。よかった~。

 

ちょっと苦しくなってきた。きっとなんかいいところがあるんだろう。リエコさん、リエコさん。これは、どの辺りがよかったの?

リエコ「ああ、わたしそれ結局、観てないんだよね」

、、、あ、風が吹いた。