Yayga!

イェイガ!(Yay!+映画)- 叫びたくなるような映画への思いを書き殴ります

『SHINOBI』

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監督:下山天 キャスト:仲間由紀恵オダギリジョー/2005年
 
少し前のこと、うちの会社の営業担当(※三十歳すぎのチャラ男、サイコパスぎみ)が帰社するなり、「クリステルと小泉が結婚しましたね」と言ってきました。その瞬間は何のことやら分からなかった。仮にも営業なら、いっぱつで伝わるように話して欲しい。
 
滝クリってババアだったんすね」というので「私、同い年なんだけど」憮然とすると、「まあ、仕方ないっすよね」と口笛を吹いて歩いていきました。おいコラ。
 
だいたいね、20歳そこそこならともかく、それなりの年齢の男が40代の女を「ババア」としか言えないなんて、それはもう良い女性経験を積んでこなかったのねって話なわけ、わかるぅ~?
今の滝川クリステル、初めてテレビに出てきた頃よりもずっと年齢相応の美しさで輝いているじゃないですか。そんなこともわからないとは、どうかしてるぜ。
 
本日は「どうかしてるぜ」をテーマにお送りします。
 
さて、前回の『パッチギ!』で話題にしたオダギリジョーのワースト映画。そう、こちらのSHINOBIですネ。異論はございますか?
以下の方が、とんちんかんな予測をして下さいました!
 
とんぬらさん『東京おかんタワー』。ぼけぼけなさっているので仕方ないですが、恐らく東京タワー オカンとボクと、時々、オトンのことをおっしゃっているのかと思います。
 
ikukoさん『有頂天』。映画の題名を呼びたいように呼ぶ人たち。困ります。THE 有頂天ホテルね。違います。

ツイッター友デンデロ・ワシントンさん(ジョン)、『たみおのしあわせ』なんだそれ? 言ってなかったけど、私もオダジョーの映画全部観てるわけじゃないからさ。

8マンさん
「ワタイ、オダジョーは過大評価されてると思ってんザンスよ」。はい、出た、8マン節!コーヒーたらふく飲んどいて下さい。
 
コンマさん『ゆれる』。ノーコメント。皆さんのブログにお邪魔できないことを日々猛省しているコンマさんです。
 
見事に『SHINOBI』の名を挙げたのは、コメントをくれた私の大好きなリアル友、B級映画の帝王&浅草橋のプリンスことつっちーと、LINEで参戦してきた親友のリエコです!お前たち、さすが。つっちーは『バジリスク』も好きだしね。
 
また、「もっと坂口拓のこと知りたい!」というお便りを100通くらい頂いたため、本作では伊賀方の忍び夜叉丸(やしゃまる)を演じている拓ちゃんをピックアップしていきましょう!
 

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拓ちゃん as 夜叉丸!
 
メイクに失敗した松田龍平じゃねーぞ!
 
 
 ◇あらすじ
甲賀卍谷と伊賀鍔隠れの忍び一族は、数百年の間、不倶戴天の敵同士だったが、互いに次期頭と目される甲賀組の弦之介オダギリジョーと伊賀組の朧仲間由紀恵は恋仲にあった。二人の縁をきっかけに、長きに亘った確執も解けるかと思われる中、徳川家康より徳川家の世継ぎを賭けて戦うよう命が下り、精鋭各5名が対決することとなる。
 
 
◇原作ファンからも主演からもバッシングされる
弦之介役のオファーを受けたオダジョーは「これは自分向きじゃない」と何度も断ったが、監督の熱意に負けて渋々出演することにしたらしい。いざ映画が公開されると、原作の甲賀忍法帖及びその漫画化バジリスクの根強いファンからブーイングを受け、オダジョー本人も、出演して後悔した映画として挙げていた記憶がある。確かに、この映画のオダジョーは、ひどい。この人は元々、役にハマったときは独特な味を出すのだが、「合わない」「苦手」と感じたときには恐ろしいくらい下手な芝居をする俳優で。そういうとこも好きなんだけどね。

この映画では、本人の乗り気でない感じがモロに出た。とにかく滑舌の悪さや棒読みが目立つが、ビジュアルもまずい。
 

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甲賀の頭領というよりは、田舎の高校生。

当時、オダジョー好きが最高潮だった私は、リエコを引っ張って映画館にて鑑賞。リエコが、途中オダジョーの「頭(かしら)は俺だー!」「急ぎ出立の支度を3&'%###?+~!!」と叫ぶ場面で盛大に吹き出したのと、椎名桔平が映る度に忍び笑っていたことは今も記憶に新しい。きっぺいについては後述する。
 
設定の変更、忍びの面々の個性や忍術の掘り下げ不足が、原作ファンの逆鱗に触れ、映画への評価は低いものとなった。良い評価を付けているのは大体「原作は読んでいませんが」という人々。
 
でも、ちょっと待って。あまりにも感情的になりすぎではないだろうか。つまり、低評価の主な理由は、(CGがしょぼいなどの感想を除けば)「人物設定や展開があまりに原作と違う!」「浅い!」というものだ。私も小説と漫画を読んでいるけれど、別物として観られないかしらね?賢明な映画好きたちは再三言っておりますよ、小説あるいは漫画を「忠実に」映画化することなど不可能だし無意味だと。
 
結論から言うと、これは結構楽しめる映画なのだ。
 
100分間で、忍びたちの人物像と忍術を丁寧に描き、各々の戦いをつぶさに見せ、弦之介と朧の悲恋まで盛り込むのは土台無理な話。映画化にあたって、恐らく腹を括ったであろう監督は、旬な役者たちを如何に魅力的に映すかに注力し、また予算のほとんどをアクションシーンにぶっ込んだ(多分)。冒頭、家康の御前に召されたそれぞれの里の代表が技を披露するシーンや、伊勢山中、三河渥美の宿での甲賀VS伊賀の戦いは十分に見応えがある。
大体、ストーリーなんて元々ないようなもんだろうよ。山田風太郎が神格化されすぎなんだよ。
 
 
◇アクション
CGとワイヤーアクションを駆使した忍び同士の対決シーンは、技術的にはしょぼいのだろうが、私は今観ても十分に楽しんだ。アクション監督は下村勇二。
 
個人的に初めて名前を知ったのは、インディーズ製作ながら根強い人気を誇る北村龍平監督の『VERSUS』(2001)だった。その後、GANTZ(2011)、図書館戦争(2013)、アイアムアヒーロー(2016)、いぬやしき(2018)、BLEACH 死神代行篇』(2018)、また直近では『キングダム』(2019)など話題作に軒並み参加、日本のアクション映画には欠かせない人物なのだ。
 
坂口拓は、下村勇二と『VERSUS』以来の旧友で、同作では主演も務めた。下村が監督した『RE:BORN リボーン』(2017)でもタッグを組んでいるし、『SHINOBI』でのキャスティングも恐らく下村との縁が無関係ではないだろう。また、『キングダム』のラスボス左慈役では、その身のこなしが只者ではないと観客をザワつかせたらしい。私に言わせれば、今更だけどね。
 
『狂武蔵』で燃え尽きて俳優を引退し忍者になっていた暗黒時代を抜け、本来あるべき場所へ戻っただけのこと。坂口拓の現在をググれば、精悍な44歳の姿を見ることができる(暗黒時代はビジュアルもひどい)。ちなみに本人は口を開けば、のほほんとしたおじさんで、かなりアホっぽいのだが、それもまた実はめちゃめちゃ強い人であることの裏返し。
 
何が言いたいかというと、下村勇二×坂口拓のアクションは最強であるはずなのだ。本作では、ワイヤーアクションがバカにされがちだが、あれだけスピード感とキレのある動きが見せられるのは、坂口拓の身体能力あってこそなんだよ、わかってるぅー?
 
改めて本作の夜叉丸を観ると、これまでの役柄とは随分趣が異なる。全身黒づくめ、黒髪長髪の玲瓏とした男の役なのだが、鑑賞中、リエコが「こいつのどこが美男やねんー、もっとイケメン持ってこいやー」とうるさかったこと!
分かってない、お前は坂口拓の魅力をまったく分かってない。どうかしてるぜ。確かに、河村隆一の顔面面積を広げたような顔しているけれど。

 

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このワンラインジャージ着物がまたイケてる♡ 私のツーラインアディダス着物とおそろいだね♡
 
夜叉丸の見せ場は、冒頭の御前試合と、伊勢山中での筑摩小四郎(虎牙光揮←知らん)との対決。ここで筑摩小四郎に敗れて死んでしまうが、二人の戦いに尺が取られていたことを考えれば、監督の力の入れ方が分かろうというものだ。
楽しもう、坂口拓虎牙光揮のワイヤーアクションを。
 
 
◇映りの良し悪しに差がありすぎる
この映画に出演して得をしたのは恐らく、毒で男を屠る陽炎(かげろう)を演じ黒谷友香と、朧を慕う少女蛍火(ほたるび)を演じた沢尻エリカだろう。前者は妖艶、そして後者の可憐なこと。また、お肌のピチピチ度の点で、完全に沢尻エリカの後塵を拝した仲間由紀恵ではあるが、現在の貫禄のつき方に比べればフレッシュで瑞々しい。特に、蛍火を殺されて怒り、破幻の瞳の術を炸裂させる場面は美しく、私のお気に入りです。女優陣に関しては、総合的によく撮れていたと言っていいのではないか。
 
対して損をしたの男性陣、こうがのとうりょうことオダジョーと、そして椎名桔平だ。どっかのレビューサイトには「オダジョー、かっこいい」「椎名桔平がカッコよかった!」などコメントがされていたが、皆さん目がどうかしている。オダジョーは既述の通り台詞回しも顔もひどい上、元々大きくはない背丈の印象を助長する撮り方がされてしまっている。オダジョー特有の、しゅっとしたスマート感が全くなく、小男感がすごい。そりゃ、本人も自分史から消したいだろうよ。
 
椎名桔平に関しては、一つか二つか三つくらい良いショットがあるが、他は、テーマカラーが紫の奇矯なコスプレをした下膨れのおっさんといったところ。コスプレ椎名きっぺい、略して、コスプれっぺい。せっかく「長髪」という武器があるのに、膨らんだ頰を隠す道具に使わないとは本人も撮影する方も、どうかしている。
 
 

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コスプれっぺい、連続ショット。
 
 
◇えーと
擁護してはきたが、もちろん決して上質な作品ではない。ただ、坂口拓と下村勇二が先導するアクション、黒谷友香がチラリと見せる足、コスプれっぺいなど、見どころは多いのよと伝えたい。
 
何よりラストの、朧が家康らの前で自らの両眼を潰してみせる、駿府城登城シーンである。それこそ比較するなら、原作では自害するところ、映画版では弦之介の遺志を継いで里のために生きることを選んだ。いいじゃないですか。この映画オリジナルの脚本、好きだよ。
 
血の涙を流しながら「どうか、この通りでございます」と頭を下げる仲間ちゃんを見て心が動かないなんて、どうかしてるぜ?
 
勝手にオダジョー・ワーストに挙げてしまったが、彼に合わなかった役という意味でのワーストであって、「原作と違う」で片付けてしまうには勿体ないエンタメ作品だ。
ところで、早く『キングダム』が観たいな!