Yayga!

イェイガ!(Yay!+映画)- 叫びたくなるような映画への思いを書き殴ります

『ナラタージュ』

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監督:行定勲 キャスト:松本潤有村架純/2017年

皆さん、ちは。
以前、うちは老人が多い地域だと書いたのだが、そのメリットデメリットははっきりしている。例えば、雨が降り出すとすぐに隣家の爺さんがピンポンして「洗濯物が濡れるぞ」と教えてくれる。なかなかさぁ、「あ、○○さんち洗濯物干しっぱなしだな~」って思ってもピンポンするまで少しの間は躊躇するよね。すぐよ、すぐ。なんなら、こっちも気づいて取り込もうとしているくらいのタイミング。

また先日ピンポーンとチャイムが鳴り、ドアを開けると、枝切りバサミを持った知らない爺さんが・・・!そしたら「外に忘れてるぞ、誰かに盗まれるぞ」って言って去っていった。うーん、誰かハサミを盗むかな?あと、誰かうちの前まで水撒いてくれる。親切と捉えるか過干渉と捉えるかは人に依ると思いますが・・・

デメリットはご町内の謎のマナー。じいさんばあさんばっかりなんで、よく人が死ぬわな。こないだもどっかの角のじいさんが死にました。斜め向かいの渡辺さん(優しくていい人)が訪ねて来て「お香典だけ持っていこうって話なのよ、私今夜行くから一緒に行こうか」と言ってくれた。金額も渡辺さんの言うままに用意したら、後ろの家のばあさんが訪ねてきて、私と行きましょうと言うのよ。要は町内会の班?かなんかが違うのだから渡辺さんと行くのはおかしい、私と行くのが筋でしょうって言うのね。え~。分からん。しかも、そのうち班長が回ってくるんだって!

さて、そんな感じで今日はですね、ナラタージュです。
ブログ友達でイケおじ(願望)管理職のとんぬらさんに「もっと甘い口調でブログを書いてくれ」と言われたので、相応しい題材を選びました。しゃぁぁぁ、恋愛映画、いくでー!

 

◇あらすじ

大学2年生の泉のもとに、高校時代の演劇部の顧問・葉山から、後輩たちの卒業公演への参加を依頼する電話がかかってくる。高校時代、泉は学校になじめずにいた自分を助けてくれた葉山に思いを寄せていたが、卒業式の日に起きたある出来事を胸にしまったまま、葉山のことを忘れようとしていた。しかし1年ぶりに葉山と再会したことで、抑えていた恋心を再燃させてしまう。(映画.com)

以前、友リエコと他の映画を観に行ったとき、本作『ナラタージュ』の予告が流れ、どうやら松潤と坂口健太郎の間で揺れる話だと理解したリエコが隣で「いや、坂口健太郎一択だろ」と呟いていた。果たして?

映画は、オフィスの窓から雨の夜空を眺める工藤泉有村架純の姿に始まる。「雨の日になると思い出す」というナレーションから時は戻り、彼女が教師の葉山 松本潤に恋した高校時代、また、葉山と再会する大学二年の夏の日が交互に描かれるといった構成だ。

高校時代は、昼休みに有村がMJの社会準備室を訪ねるシーンを中心に進んでいく。手作りのクッキーを摘まみながら、共通の趣味である映画について語り合い、DVDを貸し借りする昼休みのひととき。社会科準備室の扉を開けると、窓から入る暖かな光を背に「おう、今日は遅かったな」「座ったら?」と当然のように迎え入れてくれるMJは、有村の心の支えとなっていく・・・。
いいわ。ステキだわ、アオハルだわ。まさに『ポケットからきゅんです』。私もこんな高校生活を送りたかったわぁ。(←私的甘い口調)

ところでこの辺り、キュンとなりながらも物語上重要な「きっかけ」や「経緯」が飛ばされるので、首を傾げることも多いのね。二人の出会いは、ある雷雨の日、びしょ濡れで廊下を歩いている有村にMJが「ねえ」と声を掛けたことなのだが、そのシーンはそれでプツリと終わってしまう。別の日、有村が制服のままプールに落ちる事件があり、普段は草食動物のように温厚なMJが、監督していた教師の胸倉を掴んで食ってかかるのだが、一体有村は何故プールに落ちたのか説明もなければ、MJがそこまで激高するほど有村を特別に思うようになった背景も光のスピードで吹っ飛ばされる。

また、卒業間近のある日、「先生、恋人いますか」と有村に訊かれたMJは、「少し、歩こうか」と気取って立ち上がり、次のショットでは曇った空の下、汚い水辺を歩きながら重苦しい悩みを打ち明けてくる。相手、生徒だからネ・・・。しかもお前に好意寄せてんの。重いし甘え過ぎだって。上記のプールのシーンでは「突然キレるMJ感」が否めないし、現役生徒に突然プライベートの話をするなど怪しさ満載、MJの人物像がよくわからん。もちろん二人の関係を効果的に演出するために敢えてここでは描かずに後半へ送ったのだと思うんだけど、高校で生徒と教師が特殊な関係になった背景や有村がMJを愛した理由が伝わりにくく、唐突感が否めないんである。あ、MJの悪口を言ってんじゃないのよ?そこはよろしくね(※)

※義妹(弟の嫁)とその姉が熱烈な嵐ファンであるため忖度。でも好きなのは確か相葉。

高校生の恋愛映画あるあるも健在で、すなわち、有村が用があるときMJは『必ずいつも一人でいる問題』。嫌われ者ならともかく、生徒から信頼されており面倒見のいい先生という設定なので、まぁどう考えてもいつも人に囲まれているはずだろう。だが、有村が話したいとき、MJはいつも一人きりで「どうした?」と振り向いてくれる。要は都合により「二人の世界」が作られ過ぎていて、学校の廊下にすら誰もいなくなるので、「他の人間どこいったーい」と失笑してしまう。更に、いつも深刻な顔でぼそぼそと話し、言いかけてはやめたりするもんで「暗いカップルだな・・・」「家庭に問題でもあるんですか?」ってね(家庭に問題あるんだけどさ)。
それにしても、作品上、雨が重要な要素とは言え、架純ちゃんはよくびしょ濡れになるコである。

 

◇坂口とMJの天然

大学二年の夏休み、有村はかつて所属していた母校の演劇部に、文化祭で発表する劇のため助っ人として参加する。そこでMJと再会するわけだが、この時に他の元部員に誘われてやってきたのが坂口健太郎演じる小野だった。演劇経験を持つ坂口は元同級生たちと比べてスマートで、先輩の彼女に言い寄られて所属していた劇団を辞めたなどの逸話を持つモテ男。そして演劇部で共に過ごすうちに有村に惹かれていく。なるほど、これは先生(MJ)、分が悪いわ・・・。と思ったんだけど、坂口の天然が各所で爆笑を引き起こす。やたらと「将来何をしたいの?」と誰かが誰かに訊くこの映画だが、あるとき坂口は有村に打ち明ける。
「おれさ、靴を作りたいんだ」。

靴??

靴とな。貴乃花の息子くらいしか思い浮かばないんだが、靴作りたいの?あなた演劇やりたいんじゃなかったの?役者をやってるうちに裏方に興味を持ったとかじゃなくて、靴限定なのね?まぁまぁ、自由ですよ、それは。さらに健太郎は言う。

「試作品があるんだけど、うちに見に来ない?」

試作品が、あるんだ・・・。なら行かねばならんやな。あにはからんや。さもあらん。ここで「うちで飲み直さない?」と誘われたならば、架純ちゃんも「明日も早いから」とか「うーん、私一人でお邪魔するのはどうかな?」と断ったと思う。しかし「オレが作った靴、見に来ないか?」と言われたら、「ああ、靴・・・?じゃあ見に行かなきゃかしら?」となるわな。

さて、ここで観客は思い出す。健太郎は初対面の際、架純ちゃんに「靴のサイズ、何センチ?」と訊き、「そんな風に聞かれると恥ずかしいな」と恥じらわせているのである。私も「ヘンな奴だな」と思ったけど、彼は靴職人になりたいのであって、別に下着のサイズを訊くような疚しい気持ちではなかったんだな。やっと分かったわ。

そして、そうなのです、坂口の部屋に上がり、「履いてみて」と試作品を差し出された有村が足を通せばサイズはぴったんこ。有村のことを想って作った靴だったのだ。こうなるともう、それはシンデレラやないかい。しかし、MJを忘れらない有村は「ごめん」と健太郎を突き放す。ほなシンデレラと違うかぁ。

靴職人坂口のアプローチにより、笑いのツボを刺激され箸が転がってもおかしい状態になった私は、次のシーンで映画館から出てきた有村が、雨空を見上げながら呟くセリフにも爆笑。「傘が、なかった」。それはもう『傘がない』やないかい。しかし、偶然にも同じ映画館にいたMJが傘を差しだす。傘、あったやないかい。というか、架純ちゃんがよくズブ濡れになるのは、天気予報を見ないコなのかな?

さらに次はMJである。坂口の思わぬ靴アタックにより風邪を引いて寝込んでしまった有村。そこへMJがスーパーの袋を下げて見舞いに来る。「演劇部の手伝いで無理をさせたかな?」と気遣いながら、おかゆを作ってくれる(こんなことして好きになるなって無茶だわ、せんせぇさぁ)。ベッドでおかゆを食べる有村の横に付き添ったMJは、りんごを取り上げ、言う。
「りんごは、すりおろしでいいかな」

りんごは、すりおろしでいいかな!?

風邪のときにリンゴを擦り下ろして食べるのは絶対ルールじゃないし、やるとしても5歳児まで!うちの甘えっこの娘なら「擦り下ろして」って言うかもだから、百歩譲って10歳まで!もお。冗談キツイわぁ、せんせぇ。いやマジよ。皆さん、わたしの創作だと思ってるでしょ?ホントに言うの、気取った眼鏡のクソ真面目な顔で「すりおろしで、いいかな?」って。

ハイ、そこで架純ちゃんが「いやだぁ、子供じゃないんですよ」と返す!「そうか、悪い悪い」と金田一のごとく毛量の多い髪をかくMJ!ほっこりした空気が二人の仲を近づけて・・・ってシナリオかと思いきや、訊かれた架純ちゃん、コクンと頷く。え、摺り下ろされたいの、あなたも?
「病気のときに見舞いに来てなんか起こる」はラブストーリーの王道だと思うんだけどさ、すりおろしのせいでリンゴばかりに目が行ってしまう。病床のドキドキを返せ。

一方で有村は、告白を断った後も坂口と友人関係を続けていた。演劇部の文化祭での発表が盛況のうちに終わり、興奮冷めやらぬ雰囲気の中、坂口が有村に言う。

「オレさ、この後実家に帰るんだけど、一緒に行かない?」

実家に、一緒に??

再度書くが、二人は「友人関係」である。付き合って二年のカポーではない。お前は何を言ってるんだ?ここで「打ち上げでもしない?」と誘われたならば、架純ちゃんも「じゃあ、他の皆も誘おうか」と返したと思う。しかし「実家に来ないか?」と言われたら、「ああ、実家・・・?じゃあ皆で行くのは珍妙でんがなそりゃ。私ひとりでお邪魔しよかー」となるわな。

しかも、坂口は有村にフラられているのである。その相手を突然実家に連れて行こうとする坂口の浮世離れ感、天然、強心臓、もうどうにもならタージュ。
そして、バイクで二人乗りして出発した。盗んだバイクで走りだす~♪ ああ、盗んではいないのね、じゃあ尾崎じゃないやないかい。

坂口の実家は京都の良家と思われ、お父さんもお母さんもお姉ちゃんもめっちゃいい人だった。立派な和室に泊めてもらい、素敵な庭を散策して二人で空を見上げた。京都観光もした。そして別れ際、架純ちゃんは坂口の気持ちに応える。「私と付き合ってくれますか?」

よし、ここで終わろう!終わりだ~、終わり、みんなもう帰って!予想と違って噛ませ犬はMJの方だったが、意外性もこれ良し。架純ちゃんは、はっきりしないメガネを切り、新しい恋に踏み出しましたっと。私はここで観るのを止めたい。

だがしかし、ここで映画はまだ半分だ!


◇甘えんぼうのMJ、モンスター化する坂口

すりおろしりんごで天然爆発させたMJの甘えんぼうは続く。MJは以前の結婚生活で負った傷を引きずっていた。妻との関係に向き合えないまま、有村が自分に寄せる信頼と好意に甘え、度々彼女に救いを求めてしまうのだ。それは、突然夜中に電話を掛けてきて「いま少し話してもいいかな?」という程度の細やかなものなのだが、煮え切らないMJから離れて坂口と前に進もうとしている有村にとっては十分に心乱される行為。そして全身をハリネズミのように尖らせ、二人を気にしている坂口にとっては裏切りに等しい行為。優しかった坂口は、携帯を見せろと迫ったり、些細なことで怒鳴るような粘着男に変貌してしまう。こーわーいーわー。あの細マッチョな身体と削げた頬も大変苦手ですぅ。リエコさん、一択じゃなかったです。有村が夜道で変な男に付けられ、坂口に電話する・・・というくだりがあるのだが、坂口の反応とMJの反応の違いが、その後の展開を予見させるのがよかったな。

さて本作、長く感じてしまうのが難点だ。上述したが、前半で色々思わせぶりに溜めたものを後半で明らかにしていくと言う流れに加え、差し込まれるエピソードが少々多かったかな?と思う。皆さんも私のダラダラした文章のせいで長いと感じられたことでしょう。私は、こんなシンプルな映画について何故5000字も書いているのですか?とんぬらさんのせいだよ。ボーナスの査定とかしてんじゃねェェェ!

後半は決して悪くなかったし、止まっていた懐中時計が時を刻み出すラストもよかったと思う。有村がやはりMJを諦められないことを痛感し、坂口に「ごめんなさい」と告げて靴を脱ぐシーケンスは悲しかった。

各所レビューでは辛口点がつけられ、「MJは浮気男」「束縛男の坂口が最低」「有村架純はどっちつかずフラフラ」と言った意見が多かったけど、そうかな!?MJは有村の気持ちに甘えてしまったけれど、自分の「弱さ」と向き合おうとしていた。坂口は有村を手に入れたのに、疑心暗鬼になって自分で自分を苦しめた。そして有村は全編を通して凛として心優しく、MJが「優しくて頼りになる先生」でない側面を見せても躊躇せずに受け止めるいじらしい子ォであった。

逆に思うんだけど、みんなそんなにキレイで誠実な恋愛をしているの!?いや、恋愛のみならず、常に道から逸れず人を裏切らず傷つけずに生きているの?だとしたら、ごりっぱですねとしか言いようがない。
まあただ、「この映画どうでしたか」と聞かれたら、「靴」と「りんごのすりおろし」「実家」といった全然重要じゃないワードに集約されてしまうんだけどね・・・。

最後はこの言葉でお別れしましょう。

恋にならタージュ。。。でも最後は笑って、さよならタージュ!

とんぬらさん、女子っぽいレビューいかがでしたでしょうか?がんばって書いたんだからねっ。