Yayga!

イェイガ!(Yay!+映画)- 叫びたくなるような映画への思いを書き殴ります

『見えない目撃者』

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監督:森淳一 キャスト:吉岡里帆高杉真宙/2019年

皆さん、こにゃんちわ~。

先日近所のスーパーで名前を呼ばれて振り返ると、パパ友のさーちゃんがいました。
会うのはとっても久しぶりで、しかもマスクで顔半分が隠れている状態だったので、「よくわかったね?」と言ったら、さーちゃん「うん、なんとなく」。
家に帰ってハッとしたのだが、そのとき、かぶる人まずいないだろうなというくらい派手な服を着ていて、しかもずっと昔から持ってる服で、これじゃね?と。「あ、あの見覚えある服は、やなぎやさんだ・・・」と。

なんか恥ずかしい、40も過ぎて、そんなふうに認識されるの恥ずかしいよ。

まあ、いいや。本日は『見えない目撃者』をこき下ろします。

巷では、日本映画もやればできるじゃんって言われてるね。知っているけど、間違いなくコレじゃないわ。

 

◇あらすじ

警察学校の卒業式の夜、自らの過失で弟を事故死させてしまった浜中なつめ(吉岡里帆。自身も視力を失い、三年後の現在も弟の死を乗り越えられずにいた。ある日、車の接触事故に遭遇したなつめは車中から助けを求める少女の声に気づく。誘拐事件を確信した彼女は、もう一人の目撃者、春馬高杉真宙の協力を得て独自に少女の捜索を開始する。

監督は森淳一。よく知らないと思ったが、『リトル・フォレスト 夏・秋(2014)』『リトル・フォレスト 冬・春(2015)』の監督だった。これ、いい映画でさ~。橋本愛が田舎で野菜を育てたり貯蔵したり、一人静かに料理を作って食べる映画なのだけど、その時間の豊かなことと、同時に描かれる挫折や悩みが過剰でなく、料理を邪魔しない、いい塩梅で。途中から、子供たちと一緒に観ました。

まあ、そういうわけで、けなすのは申し訳ない気がするんだけど・・・。
あ、ネタばれです。

 

◇超狭小ネット世界

前半一時間、容疑者の土建屋の敷地内から少女四人の遺体が発見されるまでは悪くない。ちょうど健康診断が終わって休んでいるときに観たんだけど、周りが気にならないくらい夢中になってしまった(つまり必要以上に休憩を取った)。

しかし、そっからがダダ滑りなんだ。。。
まず、得たいと思う情報が都合よく寄せられるさまがとても浅い。吉岡は、少女たちの身体から欠損していた部位「耳、鼻、口、手」をネットで検索するが、手掛かりは何も得られない。そりゃそうだろうな。この検索で殺人に関する情報が出てきたら、子供が人間の身体のことを調べる時とか困るわ。

しかし、4つのワードに「神」を追加すると、仏教の教え「六根清浄」の情報が表示される。これにより吉岡は「儀式殺人を行った可能性がある」と犯人の動機に速攻で辿り着く。

ネット優秀すぎない?吉岡へのSEO対策がすげえ。というか、吉岡以外はネットで情報収集しないんだね?

また、高杉がSNSでちゃらちゃらと「情報求ム」と上げるや否や、すぐさま犯人に夜道で襲われる。犯人が何故かこちらの行動や居所を正確に把握しており、時間と空間を無視して現れるのは私の嫌いなスリラーあるある。ちなみに本作では犯人の神出鬼没ぶりは「警察官だから」で片付けられる。

友人が行方不明だという女子高生がSNSを見て訪ねてくれば、まさにその「友人」が吉岡らが捜索している少女と一致し、高杉がちゃらちゃらと不動産情報を検索すれば犯人の隠れ家も判明する。警察いらないな。

 

◇誰が一番ドンくさいか選手権

目の見えない吉岡をドンくさいと言っては誤解が生じそうだが、ドンくさいのは周囲の人間だ。視覚に不自由のない高杉や刑事たちの中にあって、不自由があるからこその特化した力により犯人に迫る、主役を活かすポイントはそこだろう。

しかし、この映画が行ったことは真逆。他の人間が、吉岡に合わせて歩調を緩めることで、吉岡が活躍する空間を無理やり作り出す。

その配慮というか浅慮が、不自然な間を作り出し映画全体をモタつかせる。残念としか言いようがない。以前こちらも貶しはしたが、本作を観ていてドント・ブリーズの面白さがようやく分かった。辻褄や設定など歯牙にもかけない超人ぶりを観ればよかったわけだ。

定年間近の田口トモロヲとやる気のない大倉孝二の刑事コンビの造形はいいとしても、トモロヲは人気のない場所で真犯人の日下部浅香航大に単身で迫り、「攫った子はトランクにいる」と言われ「どれどれ」と素直に覗きこんで殺される。
大倉は、高杉の「警察って正義の味方じゃねぇのかよ」との安い台詞に触発され、応援を待たずに「警察は正義の味方っていうところを見せてやるよ」と犯人の根城に踏み込んで殺される。

勝手にフラグを立てて勝手に自滅してしまいました。


◇走らない犯人

ドンくさい選手権の優勝者はぶっちぎりで犯人である。ってか、この犯人の顔がまったく覚えられない。何なら今、吉岡里帆の顔も思い出せないのだが。

吉岡が真相に近づいていることを知った犯人は、彼女を消すためにおびき出す(死んだトモロヲの携帯に吉岡からのメールが着信、それを見た犯人に存在がバレる・・・など全て予想通り)。

メガネ拭きのアルコールの香りから、犯人の正体を悟り逃げ出した吉岡は、盲導犬パルを頼みに車道脇の道を駆け、やがて駅へと逃げ込むのだが、ここでダメスリラーの次の特徴「急に無人になる駅」問題が発生。また、さらなる特徴「なぜか走らずに歩いて追ってくる犯人」もしっかりと押さえてくる。迫りくる恐怖をゆっくりした歩調と無表情で表す演出に、わたし飽きているのよ、いっそT-1000くらい走らせろ。

 

◇実況します。

オーケー、ちょっと耐えられなくなってきたので、スピーディに映画の残りを実況しよう。

エレベーターに追い詰められ絶対絶命の吉岡。主人の危機に、忠犬パル公が犯人に牙を剝いて飛び掛かる。しかし殺傷力の高そうな刀を持つ犯人に、土佐犬でもないパル公は、すぐに殺されてしまうだろう。ありがとうパル公、安らかに眠れ。

・・・。

何もたついとんねん、そのイヌ、あんたの手に噛みついてんのとちゃうよコートの裾に噛みついとるんよ。湾曲刀で紫電一閃、喉元を掻っ切ったらんかい。

しかし犯人は手に刀を持ったまま、犬を振り払おうと頑張る。もしかして女子高生と刑事は殺すが、動物は殺せないのだろうか?ジェイソンのように制約があるのだろうか?その間、パル公捨て身の攻撃を活かすことなく、エレベーター内に蹲ったまま「パルゥパルゥ」と叫んでいる吉岡。

 

・・・なに、このドンくささとモタついた空間。
私は今、何を見せられているの?

そんなとき、ついに凶刃がパルに振り下ろされる!キャウーンと地に倒れるパル公。

パル公ォォーーー!あなたの忠誠は忘れない。

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(ちょっと血が出ましたが、パル公は生きてます)

その後は何があったか忘れたが場面変わりまして、ネット検索して見つけた犯人宅に向かった吉岡らは、正直者選手権チャンピオンらしくちゃんとそこにいてくれた犯人と、家の中で鬼ごっこ。吉岡と助け出した女子高生を逃がすため、高杉が犯人と取っ組み合う。ここでも何らかの愛護精神を発揮した犯人は高杉を刺して傷をぐりぐり踏むなどするが、殺しはしなかった。手に持っている恐ろしい刀は人を殺傷するためにあるのではないのかいかいかい?

ここに至って、もはや観客は「なんで殺さないの?ホレいまだよ、その刀を拾って使わんかい」と犯人をせっつく立場に立たされる(わたしだけ・・・?)。

さぁ注目すべきは、盾になってくれた高杉を気遣いつつ、必死で逃げる吉岡が叫ぶ台詞だ。 

 

大丈夫、春馬くん(高杉)!?

 

うん、はるまくんはねえ、少なくとも大丈夫ではない。
いまねえ、犯人に刺されたところ。

はるまくんを倒し吉岡を追い詰めた犯人は、彼女の優れた聴覚を警戒して靴を脱ぐ。

あれ、ちょっと面白くなりそうじゃない? 既述の通り、「視覚を欠く吉岡が如何にして、そうでない人間を出し抜くか」が物語の鍵を握る。ラストの直接対決では、その見せ方が問われるところ。「見えないこと」を武器に吉岡はどのように犯人を狩るのか、あるいは狩られるのか!?
もしここで私を唸らせてくれたら、ソファに寝転んで「40てん」と鼻をほじるのをやめ、50点をあげてもいい。

チリリーン。

犯人、吉岡が床に落とした弟のキーホルダーかなんかを蹴っちまったー

聴覚が優れていなくても、誰でも聞こえるような音だったー

死んだ弟が、吉岡を守ってくれたぁあああーー!

よーし、じゃあ、先生、点数つけるぞー。30点だ。やっちゃいけないミスってのがあるぞー、次は気を付けような。

 

◇最後に褒めます

JK援交店の店長をやっていたほっしゃん。改め星田 英利がよかったです!あと、高杉真宙はいいと思う、名前の読み方を知らないけど。

 

引用:(C)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (C)MoonWatcher and N.E.W.