Yayga!

イェイガ!(Yay!+映画)- 叫びたくなるような映画への思いを書き殴ります

『2020年に観た映画雑感&ベスト3』

皆さん、こんにちは!リトル・ヤナギヤです♡
やなぎやがトイレに入っているので、先に始めるわね。
映画に関係ないんだけど、どうしても言いたいことが2つあるから、先に言わせて。

西大伍が浦和に来たのよ・・・。

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え?西大伍(にしだいご)知らない?西と言えば、Jリーグ滅びればいいランキング一位の鹿島アントラーズに過去所属していて、そのエグいプレーによりレッズサポからは「サイコパス」と忌み嫌われていたDFよ。大きな声じゃ言えなかったけど、私は西のプレーは勿論、日本人離れした強心臓とユーモアセンスがすごい好きで、でも鹿島にいるから好きになれない、以前はそんなジレンマに日夜身を焼いていたんだから。鹿島→浦和の直通だと難しいところ、神戸という乗り換え地点を経たことと、慎三はんという先駆者がいたことで、今回の移籍の道はまだ平坦だったと言えるわね。っていうか、超好き。顔も好き。

笑ったのが、Twitterで西をブロックしていたレッズサポが、移籍が濃厚になった途端、ブロック解除&フォローして、それをこぞってツイートし出したことね、ぶっは、あんたらのブロックもフォローも、西に伝わってないし気にもされないから。

やなぎや、まだトイレから出てこないわよね?もういっこがね。やなぎやの子供がここ数日、香水がどうたらって歌を死ぬほど歌ってくるから、頭にこびりついちゃって、うっかり手とか洗いながら口ずさんだりして地獄なわけ。だって、クッソみたいな歌じゃない?超キライな感じの歌の上、「ドルチェ&ガッバーナ」がまたクソみたいなブランドだから、なおさら不愉快。ドルガバの香水ってドンキかよ。私たちの世代では「DGのベルトした男の横には座るな」って暗黙のルールがあったものよ。今、「これでいいのだ~、これでいいのだ♪」ってバカボンで上書きしようとしているところ。あ、オーナーがトイレ行ってるのにクソクソ言っちゃいけないわね、オホホホ・・・。あ、出てきた。

やなぎや「大丈夫だった~?」
リトル「バッチリ。模倣サイトとブランド侵害リスク、その対処法について語っておいたわ」
やなぎや「そう、良かった。さて、今年もあっという間に一年が過ぎて、ヤナデミー賞の季節がやってきました。ヤナデミー賞、命名ikukoさんね。去年のはこちら」

 

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やなぎや「でもベスト10は無理だ~、それくらい映画観なかった。自粛中の完全在宅で生活リズムが狂ったし、仕事で頭悩ますことがすごく多かった。なので、観たものの寸評にしようかと」
リトル「いや、それ以上にドラマを見まくってたじゃない。『BOSCH』6シーズン、『THE WIRE』5シーズン、『ホームランド』8シーズン!これだけ見れば時間取られる以上に、頭ん中もドラマになるわ」
やなぎや「そうなんです」
リトル「挙句、『RE:BORNリボーン』だかショボーンだか分かんない映画の感想とか書いてさ」
やなぎや「謝って!今のは拓ちゃんに謝って」

 

◇『運び屋』
2018年製作/116分/アメリ
監督:クリント・イーストウッド

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リトル「『ダーティ・ハリー』とか『サンダーボルト』なんかだと色気がすごいけど、イーストウッドのおじいちゃんの包容力とかノーテンキさに包まれるような、愛すべき年寄りの話だったわね」
やなぎや「家族に罪滅ぼしするために麻薬運んで金稼ごうって動機もいい加減だし」
リトル「長いドライブで、車ん中で歌を歌いまくる場面が何と言ってもよかったわ。何回か繰り返すうちに、ただ『捕まえないであげて~』って感じだった」
やなぎや「あと、好きなのはギャングの連中と顔見知りになるうちに、あちらが気を許してくるとこ。イーストウッドがニコニコ現れると、みんな顔緩ませて、よぉじいさん元気かって。だってみんな、おじいちゃんおばあちゃんには弱いものだよ、万国共通。日本人のラッパーなんて、大体じいちゃんばあちゃんマジ感謝とか歌ってるじゃん」
リトル「・・・たまにラップの話するけど、好きなの?」
やなぎや「推しはCreepy Nutsクリーピーナッツ)BAD HOPです」


◇『MUD マッド
2013年製作/130分/アメリ
監督:ジェフ・ニコルズ

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やなぎや「私の人生は『マシュー・マコノヒーとは何なのか?』っていう疑問の繰り返しで」
リトル「あんたの人生で」
やなぎや「遥か昔に観た『コンタクト』(1997)、確かマシューは一見チャラ系の学者だったと記憶してるんだけど、映画自体面白かったし好印象。評決のとき(1996)は当時ジョン・グリシャム好きで、マシューがカッコよかったし、何度か観たなあ」
リトル「U-571(2000)とかイマイチじゃなかった?」
やなぎや「多分そこら辺で観なくなってしまった。けど、これはドラマだけど『TRUE DETECTIVE』でやっぱりすごいって衝撃受けて。と思ったら、次に観たダラス・バイヤーズクラブ(2013)が全然ハマらなかった
リトル「マコノヒーちょっとキモいじゃん。撫で肩だし」
やなぎや「それね、ちょっとキモイんだよね。でもやっぱり好き」
リトル「『MUD』は少年の目を通した愛の話。マシューが演じるマッドは、好きな女のために人を殺して島に隠れ住んでいて、主人公の少年は彼の逃亡に協力しようとする」
やなぎや「両親の不仲を日々目の当りにして、『愛し合って結婚したのではなかったのか?』ってどうしても理解できないんだよね。だから、マッドと彼女に以前の両親の姿を重ねて成就させたいと思う」
リトル「自分自身も女の子に恋して、でもすれ違って、愛ってのは理想通りの美しいものじゃないという経験を経て、また次の恋をする。大人になっていくわけよ。それが、寂しいような、頼もしいような」
やなぎや「あと場所がよかったよ。船を家にして魚取って生活している人が一定数いる土地でさ。ヤクザ連中に襲撃受けたとき、川向いのじいさんがライフルでバシバシ仕留めるとことか、手に汗握った」
リトル「ただ、私的には最後は蛇足だったなあ。あんなにきれいに回収する必要あったのかしら?あれで、ちょっとお伽話みたいになってしまったと思う」

 

◇『晩春』
1949年製作/108分/日本
監督:小津安二郎

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リトル「ついに小津を観出したわね」
やなぎや「東京物語』『晩春』を観た。あと麦秋『早春』秋刀魚の味は観るつもりなのと、S氏からは『生れてはみたけれど』『風の中の牝鶏』を勧められている。最後のはどんな映画なのか想像もつかんな」
リトル「ホークスやペキンパーもちょこちょこ観てるよね」
やなぎや「もちろん、あの人の影響なんだけど」
リトル「あの人ってふかづめさんでしょ?もういいから呼んで来ようよ。どうせ炬燵に入って首にネギ巻きながら、めかぶと焼酎を交互に飲んでるんだろうからさぁ。ちょっと、ふかづめさん!ふかづめさん! ご飯食べに行こー!めかぶは主食じゃねぇんだよコラ・・・え?ふかづめさんちにG子がいた・・・どういうこと・・・」
やなぎや「余計な創作して、波紋広げないでくれる?ただひたすら面倒くさいから」
リトル「ふかづめの今年のパワーワードは『大きな画面で映画を観ることを豊かな映画体験と思っている野郎この野郎』とかそんな感じのやつだよね」
やなぎや「そんな言い方はしていないと思うよ。あと、呼び捨ては良くないよ。」
リトル「そんなことより小津よ」
やなぎや「今更あれこれ言う人ではないわけだし、技術的なことは分からないのだけど、それでも美しい構図だなとかすごい編集だな、くらいは素直に感じた。観てて心地よいの。ゆったり揺蕩うようにずーっと観てたい気持ちになる」
リトル「話としては、『晩春』よかったわ」
やなぎや「はっきりストーリーがあるもんね。映画とは離れた話になっちゃうんだけど、簡単に言えば結婚する気のない原節子を皆してお節介焼いて縁付かせちゃう話でしょ。笠智衆演じる父親が、原節子に嫁に行く決意させるためにある嘘をつくんだけど、女は生家を出るものだし結婚こそ女の幸せ、ってのが疑いもなく前提にある」
リトル「そうね、さも当然のように。当時はそれが当たり前だったわけだから」
やなぎや「でもそれって、女の権利が叫ばれ出して、『結婚は?』と訊くことすらが許されなくなった現在からすると、シンプルというか、余計な思考や主義が必要ないから映画がするりと入ってきたんだと思う。だって、父は自分亡き後、娘を託す男を探すもんだろうし、親戚のおばちゃんはお節介を焼くもんじゃん。以前からモヤモヤしてるんだけど、結婚するかしないかは私の自由ですよねって考えと、『結婚はまだ?』っていう周囲の考えをさ、真正面からぶつける必要ってあんのかね?だって、特におばちゃんおじちゃんは言うんだよ、『結婚は?』『二人目は?』って。田舎に行けば行くほど。たとえ旧態依然の価値感だとしても、根にはこっちを心配する気持ちとか、しかも一応結婚を経験して総合した結果メリットがあるという体験に裏打ちされてるわけじゃない?はいはいって言ってればいいと思うんだけど、『女の幸せは結婚』というワードに対する反発の大きさが、逆に視点を一点に絞った映画を制作する妨げになっているように思ったり」
リトル「まぁ、状況や相手にも依るし、無神経な人、超イヤな思いをしている人いるだろうから極端な考え方だとは思うけど、多様性によってややこしくなったものはあるかも。要は『結婚が女の幸せか?』という『雑念』に囚われないで素直に観られたということね」
やなぎや「そうそう、原節子だって『結婚だけが幸せじゃない』とはっきり言っているから、もちろん分かっているわけよ、小津監督だって。それでも、お前なら幸せになれると信じて送り出す父の映画だからさ、そのまんま受け取ればいいのだし」
リトル「後妻をもらった叔父に、汚らしいわ不潔よと唇を尖らせるせっちゃん、しぶしぶ見合いした男が案外と好印象で、でも結婚という行為自体にどこか生臭みを感じてたから、手の平返しで喜ぶことを気恥ずかしくも感じてるせっちゃんが愛らしかった」
やなぎや「そういえば、『東京物語』でも、母の葬式が済んですぐに形見分けの話をし出す姉に、年若い妹が嫌悪感を示すシーンがあった」
リトル「でも、せっちゃんが、『そういうものよ』とちょっと達観した目つきで、愛しそうに少女を諭す」
やなぎや「潔癖な少女が大人の女性になっていくこととかさ、家族模様を描く中での、個々人の成長、変化の表現がとっても細やかだよね~」

 

◇『少年と自転車

2011年製作/87分/ベルギー・フランス・イタリア合作
監督:ジャン=ピエール& リュック・ダルデンヌ

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リトル「これもふかづめ推し?」
やなぎや「いい加減にしないとネギで叩かれるよ」
リトル「とってもいい映画だったわよね」
やなぎや「よかった。主人公の少年は、いずれ迎えに来るという父親の言葉を信じて養護施設で生活している。ある日、父親が少年の自転車を売ったという話を聞き、信じずに父に真意を確かめに行く」
リトル「切ない話」
やなぎや「父親のダメっぷりにイライラするんだけど、少年は頑固に父を求める。だからこそ、年上のワルにひっかかってしまう。男性からの庇護や父性を求めてるんだよね。面白いなと思ったのが、母親は何故いないのか、どこにいるのかが一切出てこない。少年は初めから母性に期待してないんだよ。だからこそ、里親となった女性から差し伸べられた手をなかなか掴めない。父を諦め、母を得る話、そんな感じかなあ、難しいことはわからないけど。あと、赤色がキャッチー」
リトル「自転車はなんなの?」
やなぎや「自転車」
リトル「自転車の話なんでしょ?」
やなぎや「自転車は、、父性と母性のマクガフィンであり、、」
リトル「わかんないならいいよ。あとマクガフィンの話は今年で終わりにしてね。」
やなぎや「赤い自転車」
リトル「色はいいよ」


◇『ローマンという名の男 信念の行方』

2017年製作/129分/アメリ
監督:ダン・ギルロイ

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やなぎや「『黒い司法 0%からの奇跡』(2020)の関連で観始めたら、かなり面白かったから、あらすじから紹介します(『黒い司法』も面白かったよ!)」
リトル「デンゼル・ワシントン演じるローマン・J・イズラエルは、優秀なんだけど、人と話すのが苦手な弁護士。ある日、ローマンの保護者的存在であった法律事務所の経営者ウィリアムが倒れて亡くなってしまう。法廷に立ったり人と折衝する役はウィリアムが担い、ローマンは膨大な知識や記憶力で彼を支える役割だったから、急にほっぽり出された形になってしまうのね。生活のため職を探すのだけど、何しろ表舞台が苦手だからうまくいかない。ウィリアムに事務所の清算を頼まれた大手弁護士事務所の経営者ピアスコリン・ファレルはローマンの能力に目をつけ事務所に引っ張る。でも、本来の主義を曲げて働くうち徐々に歪みが生まれて・・・みたいな感じかしら」
やなぎや「いや~、もう、痛々しくて終始ドキドキしていた映画だった。経験や知識は確かなのに、人に対する術や物言いを知らないから、どんどん裏目に出ていってしまうんだよねぇ」
リトル「あと、割と珍しい発想なんじゃないの?アメリカの映画に出てくる弁護士って、いろんな困難に襲われはするけど、基本的に『弁は立つ』ことは前提で。この映画では、優秀だけど能力を活かすことができない男の葛藤が描かれているの。あれね、すっごいいい野菜作っても、販売戦略がないと売れないよってことね」
やなぎや「私、例えを出された途端、よく分かんなくなるからやめてくれる?多分、かなり太って撮影に臨んだであろうデンゼルの野暮ったさも見ものだけど、コリン・ファレルいやあ、カッコよかった。また役柄がよくて、依頼人よりも事務所の運営を優先する拝金主義の弁護士だったんだけど、ローマンの不器用さや人柄にあてられちゃって、考えを変えていく」
リトル「でもウィリアムが、鞘に納めた刀のごとくローマンの使い方を知っていたのに比べて、ピアスでは使いきれなかった・・・っていうラストね」
やなぎや「例えをやめてってば。G子はこれ観たのかな?絶対観た方がいいよ

 

ボヘミアン・ラプソディ

2018年製作/135分/アメリ
監督:ブライアン・シンガー

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やなぎや「MAMAーーー!」
リトル「あ、うん」
やなぎや「Ohhhーー!」
リトル「はいはい」
やなぎや「たったいま人を殺してしまったー」
リトル「そこは日本語なんだ」
やなぎや「遅ればせながら観まして、良かった、ホントに良かった!超胸が熱くなった。最後のライブ・エイドのところは涙が溢れた」
リトル「私はクイーンには全く触れていないけど、これ、世代ド真ん中でクイーンが好きな人には、たまらなかっただろうねぇ」
やなぎや「S氏によると、史実と違うって理由で非難している人もいるらしいよ」
リトル「死ねよな」
やなぎや「でも、私は物語的にはちょっと不満あるんだ。簡単に言うと、王道過ぎて。お父さんからの無理解、バンドメンバーとの軋轢、最愛のパートナーであるメアリーとの離別。これらのドラマ自体はいいんだ、ただ細部に、一世を風靡した人物に相応しい気難しさが感じられなかったというか」
リトル「もっと、ムッチャクチャでもよかったのではと」
やなぎや「そうそう。バンドのリーダーでありスターだよ。困難はあったけど、本人が少し視点を変えて心を入れ替えたら、お父さんも彼女もメンバーも周りに戻って来る。終生の恋人となるジムとのエピソードも手早かったし。。。もっとコイツどうにもならんな!みたいな気難しさが映画自体に欲しかったかなって」
リトル「でもそれを置いといても、ライブ・エイドのパワーにはひっくり返されるよね」

 

◇翔んで埼玉
2019年製作/107分/日本
監督:武内英樹

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リトル「これはアウトだったな」
やなぎや「なんだろう、ギャグ中心の映画なのに、面白くないという・・・」
リトル「めっちゃ笑うつもりで観たのに、笑いきれなかった消化不良感ね」
やなぎや「これは、漫画→映画化に問題があったと思うのよ。あの漫画ってすごく古いじゃない?当然、笑いの感覚も古い。アレンジしないで、そのまんま映像化しようと努力した結果、うまく落とし込み切れなかったのではないかな」
リトル「それが中途半端さを生んだと」
やなぎや「だって、笑いの感覚だけじゃなくて、人の反応にしても価値観にしても、今とは全然違うわけじゃない。同じテイストで映像に持ってこようとしても無理。ただ、この作品自体が、あの世界観でなければ意味がないわけで、だから、これに関しては特に映画化という試み自体が失敗だったってこと」
リトル「そういえば、ローランドってド天然で面白いなって思ってるんだけど」
やなぎや「(?)うん。何で天然?」
リトル「前にTVで、ホストたちを香港に連れてって、すごい夜景の見える高級ホテルに泊まって、ガラス張りのフロから夜景を見下ろしてワイン片手に『お前らもこういうものを手に入れられるようになれ』って語ってるのに爆笑したのよ。やっぱ成功の象徴が、高層マンションと夜景とワインなんだなって。部屋とYシャツと私くらいベタ」
やなぎや「ああ、確かにね(スルー)。他人が作った価値観だし。普段も何も目新しいことは言ってないよね。時間は守るとか、ビジネスの相手は敬う、自分が雇った人間には責任を持つ。ある意味、それを徹底的に貫ける人間が少ないわけで、エライんじゃない?」
リトル「で、最近本屋で見かけたローランドの本の帯に『俺は特別じゃない、凡人代表なんだ』ってあったから、あ、ちゃんと自分のことわかってるんだなって感心したわ」
やなぎや「それより、なんでローランドの話するの?」
リトル「だって、この映画に出てたでしょ?」
やなぎや「・・・出てたのは、ローランドじゃなくてGACKTだよ」
リトル「あら、そうだった!?まあ、いいや、似たようなもんじゃない。だって、GACKTって周囲のスタッフに自分のこと『若』って呼ばせてるのよ。私だったら恥ずかしくてベッドから出て来られないわ」
やなぎや「だから、私たちは凡人ってことなんでしょ」

 

◇ベスト3

やなぎや「今年観た映画のベスト3は挙げてみることにしました!」

■3位『グラントリノ
2008年製作/117分/アメリ
監督:クリント・イーストウッド

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リトル「イエー。超良かった、これ」
やなぎや「最近のイーストウッドの中で一番好き。偏屈&頑固なクソジジイっぷりがホントに楽しすぎた」
リトル「人種で区別することと偏見を以て人に接するジジイを描くことの遠慮のなさ。田舎のジジイなんてこんなもんだぜっていう当たり前な言い分ね。全部が全部目くじら立てるものでもないし、言われた人間だって冷や汗一つで流すこともあるのに、当事者を置いてけぼりに関係ない世間が、何でもかんでも人種差別と騒ぎ立てる現状を皮肉ってる感じがあるわよね」
やなぎや「『運び屋』でも、物議を醸しそうなシーンっていうか、ギクッてなる場面があってさ」
リトル「あれでしょ、車の故障で立ち往生している黒人のカップルに、『白人がニグロを人助け』ってニカニカ笑うとこでしょ。
やなぎや「うん、で、当のカップルは『おじいさん、今はニグロって言わないのよ』って呆れてる。現場はそんなもんですよ、って感じだったよね」
リトル「スパイク・リーとあんなやり合ったのに、またやった!って爆笑したわ」
やなぎや「『グラントリノ』では、隣のモン族の家族に対して最初、偏見100%の態度で臨むんだけど、その家の少女と交流を持つにつれ情が上回り、『人と人との繋がりが何より大事』ってとこに帰結する爺さんに、めちゃめちゃ可愛げがあった」
リトル「ラストがイカしていたわー」
やなぎや「懲りない爺さん、って感じだよね、本人も演じるキャラクターも。まだまだ長生きして欲しい」

 

2位『東京物語
1953年製作/135分/日本
監督:小津安二郎

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リトル「名作来たね」
やなぎや「構図の素晴らしさにまず目を奪われ、独特な台詞回しに耳を奪われる。なんだろう、すっごい繰り返すの。例えば最初に、東京の子供たちに会いに行くため旅支度をしてるときに、『空気枕、持ちました?』『お前に渡したろう』『こっちにはありゃしませんよ』、これを繰り返すの」
リトル「あれも。『ほうか、あかんのか』の繰り返し」
やなぎや「泣いた!!」
リトル「それを言うなら、笠智衆東山千栄子の、もはや似た者夫婦の域を超えたそっくりな座り方と、収まりの良さがすごかった。旅支度のシーンや熱海の堤防で座ってるシーンとか、おんなじ格好だものね」
やなぎや「だからこそ、のちに一人が抜けた空間が目に痛い」
リトル「そしてせっちゃんよね。ラストで、そこまで全部『いいえぇ』『とんでもない』と受け流してきたせっちゃん、そして『大人になると(皆自分の生活第一になるのは)仕方ないものなのよ』と少女を諭してきたせっちゃんがさ、笠智衆に、『私だって○○さん(死んだ旦那で笠智衆達の次男)のことばかり考えてるわけじゃない、皆さんがおっしゃるように貞淑なばかりではない』と告白して涙を流すとこが本当によかったわあ。いいんだよう、生きてる方を大事にしていいんだようって泣いたね」
やなぎや「本当の親子より、笠智衆とせっちゃんの間に親子の絆を感じた」

 

■1位『ショート・ターム』
2013年製作/97分/アメリ
監督:デスティン・ダニエル・クレットン

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リトル「なるほど、これなんだ」
やなぎや「今年の気分に合ったって感じかな。ブリー・ラーソンめっちゃ良かった。ブンむくれ顔女優ナンバーワン」
リトル「『ルーム』(2015)より前の映画なのね。ブリー・ラーソンが演じたのは、ティーンエイジャーを預かる短期保護施設『ショート・ターム』で職員をしているグレイス。同僚でボーイフレンドのメイソンは優しくて、幸せな日々を送っているんだけど、実は子供たちと同様、心に深い傷を負っていて」
やなぎや「グレイスやメイソンを始めとする職員たちには何の権限もなくて、ただ子供たちに寄り添い、生活の面倒を見るだけ。だから、子供たちが敷地の外に出たら何もできない」
リトル「パニックを起こして走り出してしまったり、脱走しようとする子供を敷地の外に出してしまったら彼女たちにはどうすることもできないから、まずは敷地から出さないこと。追いついたら両腕を掴んで座って子供が落ち着くのを待ち、いいタイミングで『落ち着いた?』『話したい?』と声をかける。いうなれば、できることはそれだけなのよね」
やなぎや「問題を抱える子供たちに対する『構えなさ』が心地よい映画だった」
リトル「でも実は、グレイス本人が敷地の外に出ることに怯えていた、とも言えるわね。虐待を受けているある少女に過去の自分を重ねて、敷地を飛び出し権限を逸脱した行動を取ってしまったときに抑えていた壁が崩壊してしまうの。でも、それをきっかけに、また新しいものを構築していく、子供たちと同じように」
やなぎや「最初と最後、おんなじシチュエーションのシーンがあるのね。勤務に就く前と仕事を終えた後に職員たちが外で寛ぎながらおしゃべりしている。最初の、映画冒頭での世間話から伝わるのは、自分たちの無力さやこの仕事の無意味さ。でも最後に話しているのが、数少ないながら芽生えた希望の話なのがすごく良かったね。映画自体がさ、ほとんどが困難で不幸なことばかりだけど、成就するものもある、と示して終わるの」
リトル「最後の話は観ながらこちらも笑顔になったわね!」


やなぎや「ってことで、もうすぐ一万字です」
リトル「終わろう。疲れた。どっかで毒舌発動しようと思ったけど、疲れてできなかった」
やなぎや「いや、十分ですよ。それでは、皆さん、よいお年を~!」
リトル「来年もよろしくお願いします!」