Yayga!

イェイガ!(Yay!+映画)- 叫びたくなるような映画への思いを書き殴ります

『トワイライト 初恋』

 
『トワイライト』(Twilight):
ステファニー・メイヤー著のティーン向け小説シリーズ。雨と霧の町、アメリワシントン州フォークスへ引っ越してきた少女ベラと、そこで彼女が出会った完璧な容姿を持つヴァンパイア・エドワードとの許されない恋を描く。(Wikipedia
 
私たちの世代では小中学校時代、本好きの女の子は「ティーンズ小説」の道を通ったものです。多くは数年で卒業しますが、抜け出せない子はそのまま男子に大いなる幻想を抱くか、オタクの道へ進んだりします。
 
高校生のとき、同じクラスに松井さんというティーンズ小説大好き&漫画オタクがいて、クラスのヒエラルキーなどどこ吹く風、授業中にせっせと自作の漫画を描いていました。
ある日何気なく見せてもらったノートには、男のキャラ同士のどえりゃあシーンが描かれていて言葉を失ったなあ。漫画の内容より、「松井さん、こんなこと考えているんだ」とやたら大人に見えて衝撃だった。
 
その後、松井さんを意識したのはスキー合宿のとき。結構な斜面を蛇行して滑るコースを、クラスでただ一人、真っ直ぐ降りてくるんですよ、ものすごいスピードで。下で見ていたクラスメイトたちがざわざわして、誰ともなく「直滑降」「直滑降」と囁き出し、以後「直滑降の松井」と呼ばれるようになりました。高校生活を思い出すと、あのどえらい漫画と松井さんの直滑降する姿が脳裏に浮かぶのです。
 
そんな彼女に思いを馳せつつ、本日はアメリカのティーンズ小説を映画化した『トワイライト 初恋』をご紹介。原作の小説は以前、親しい友人のリエコに借りたのだが、あまりにしんどかったため、パラパラとしか読んでません。今明かす真実、すまぬリエコ。映画化されるので観に行こう!と言われて、慄きつつ映画館に行ったら、意外に面白かったんだ。
 
1. 『トワイライト 初恋』(2008年)
2. 『ニュームーン/トワイライト・サーガ』(2009年)
3. 『エクリプス/トワイライト・サーガ』(2010年)
4. 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1』(2011年)
5. 『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part2』(2012年)
 
全部で5作もあります。
 
 
ティーンの夢は全世界共通
主人公のベラは人付き合いが苦手で自分の容姿にすら無頓着だが、生来の美しさで転校初日に注目の的となる。校内で異彩を放つ「カレン家」の一人エドワードも、ベラに興味を示す・・・。
こういったベタな恋愛小説は日本でのみ量産されているのかを思ったら、国境は関係ないのだなと痛感。それにしても、クリステン・スチュワートが可愛すぎる。青春の只中にわざわざどんよりしたド田舎に引っ越してきて、ボロい中古トラックをプレゼントされて喜ぶこんな美しい高校生がいるか。 
 

f:id:yanagiyashujin:20190404154054j:plain

(C)2008 SUMMIT ENTERTAINMENT, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 
ところで実は、エドワードは吸血鬼で、カレン家もみんな吸血鬼だ。ネタバレが唐突でしたか。あ、あらすじに書いてありますね。学校では謎めいた美しい集団という扱いだが、全員ともかくメイクが白すぎるので、人外のものであることは一目瞭然。ベラの目が彼らに釘付けになる初登場シーンでは、美しいより何より「白っ」と思ったし、監督も「うーん、衣装は白にしなくて良かったかも」と思ったかも。
 
カレン家で一際ゴージャスなエドワード役を務めたのはロバート・パティンソン。日本の婦女子から見ると少々濃いめで、イメージと違うとかイケメンじゃないなどの意見はあろうが、クリステン・スチュワートロバート・パティンソンのカメラ映りというのか、禁断の恋に悩む2人が収まっている画面には文句のつけようがない。
 
個人的にエドワードはキモいが、好みのフィルターをかけなければ、霧に烟る森や山の背景も相まって、人間離れした凄みが表現されているように思う。ただし1作目まで。シリーズを重ねるごとにパティンソンの綺麗な画は減り、特に3作目の映りはいまいち。
 

f:id:yanagiyashujin:20190404154413j:plain

なんだろう、イマイチじゃない?髪型のせい?
 
主役の二人は、現実でも恋人同士となったらしい。ここからはリエコに聞いた話だが、ロバート・パティンソンは極度の風呂嫌いで、一週間だか二週間に一度しかシャワーを浴びないので、臭くて辟易したクリステン・スチュワートが別れを告げたんだそうだ。ホント裏取ってないから。自己責任でよろしく。
 
 
◇玉ねぎキャッチボール
初対面でエドワードに避けられたと感じて傷つくベラ。しかし数日間の欠席後、学校にやってきたエドワードは一転してベラに近づく(欠席している間、エドワードは心を整えていた)
理科の授業かなんかで、玉ねぎの根っこかなんかを代わる代わる顕微鏡で覗きながら、
 
初期よ(たまねぎ)。なぜ休んでいたの」
ああ、初期だね。ちょっと野暮用でね」
 
中期だ。ところで雨は好きかい」
本当に中期か確かめていい?雨は嫌いよ」
 
などと、一つの顕微鏡を押しやりつつ、根っこが何期かというどうでもいい話に、私的な会話を折り混ぜていく。顕微鏡をボールに見立てた、好意と興味のキャッチボール。この、授業中にぎこちなく近づいていく感じがいいよね。それに、ベラの顕微鏡の覗き方がおしゃれだよ。こんなセクシーに玉ねぎの根っこを覗く高校生はいない。トワイライト全五作を通して、一番官能的なのは、この玉ねぎキャッチボールシーンに決定しました。ベスト決まるの、はや。
 
さらに、ティーンのみならず婦女子全般をきゃあきゃあ言わせるのは、エドワードが正体のバレることも顧みず、危険に晒されたベラを救うシーンであろう。学校の駐車場で離れた場所からチラチラと視線を交わす二人。運転を誤った車がベラに向かって暴走する。いつの間にかベラの側にいたエドワードはあろうことか、素手で暴走車を止める。ここはいい。
ベラからは、吸血鬼のエドワードには耐えがたい甘美な香りが漂っており、また、人の心を読む能力を持つエドワードが、唯一ベラの心だけは読むことができない。女性というものは、とかく特別感を重視するので(多分)、ここも全世界婦女子共通のきゃあきゃあポイントだ。
 
 
エドワードがtoo much
しかし、恋愛的ワクワクのピークは暴走車を手で止めるシーンまでである。始まってから25分。ピーク迎えるの、はや。恋愛ドラマで一番楽しいのは男女がくっつくまでであるのは言わずもがな、エドワードが理性と本能の間で苦悩したり、ベラが「ゴージャスな彼が私なんかを気にしてるみたい?でも、好かれていると思えば嫌われているようにも感じる・・・どっちが本心なの?それに彼、なんかヘン。瞬間移動するしワゴン車を素手で止めた。彼って・・・何者?」と悩んでいるあたりが華。少女漫画風に書いてみましたが、私が読んだ少女漫画は、もはや古典なので、その点お許し下さい。
 
開き直って感情全開になってからのエドワードの、ベラに対する愛情と庇護はtoo muchだ。寝ているときくらい一人にして。ベラのパパに対して「ベラは僕が守ります」って、何からやの。ベラはその時点ではまだ何も危険に晒されてはおらず、リスクと言えばボロのトラックで学校に通っていることくらいだ。吸血鬼に守ってもらわなくても、自分で回避できる日常のリスク。しかし、君を守ると言っておけば、全世界のティーンは喜ぶといわんばかりの作者の意図を汲んでか、その後も守る守るといった台詞はやたらと多い。
 
はしゃいだエドワードは、ベラを家族に紹介するため自宅に招く。そこで、自分の部屋の窓からベラを背負って飛び出し、枝から枝へと飛び移り、「クモザルだぞー」と言いながら、言葉通り蜘蛛スタイルでサササーっと木の上へ登っていく。笑っていいのか、エドワードのはしゃぎっぷりを暖かく見守るべきか迷う。
 
余談だが、ちょうどここらへんを観ていたときに、夫が帰ってきた。おかえりぃ。
 
夫「暖房つけてるの?暑くない?」
私「ちょっとエドワードのクモザルがサムすぎて、私の手足も冷えてきちゃっ」
「消すぞ」
 
暖房を、消されてしまいました。
 
サカサカと木を登るエドワードさえ視界に入れなければ、針葉樹の頂点から見下ろすフォークスの自然は絶景だ。それまでの、雨と霧で湿った森の光景には、2人の戸惑いや複雑な状況が反映されていたが、針葉樹の天辺からの「上からショット」(※)では、解放感、恋愛絶頂期の悦びが代弁されている。
 
※「上からショット」…もっとちゃんとした言い方があるはず。
 
 
◇野球がダイナミック
さて、玉ねぎに次ぐ見所は、どうにかカレン家に受け入れられたベラも参加し、皆で野球をするシーンだ。野球は、雷が鳴る日にしかできない一家の娯楽(なぜ雷の日限定かは観て下さい)。通常の何倍ものフィールドを使って球をかっ飛ばし、それをキャッチしに森に突っ込むダイナミックな映像は単純に楽しい。というか、顕微鏡のキャッチボールといい、やたら野球を盛り込むじゃない?監督は野球好きなのかな。
 
そして、この映画の醍醐味は、多数登場する吸血鬼あるいは人狼たちの中から、お気に入りのキャラクターを見つけることにもあると思うが、私の推しは何といっても、カレン家のアリス。
 

f:id:yanagiyashujin:20190404155241j:plain

アリスかわいい~。ピッチャーを務めるアリスもかわいい。
 
と、遊びに興じていたら、霧の中から余所者の吸血鬼三人が現れ、場は一気に緊張する。カレン一家は、ベラを背後に隠して人間の存在を誤魔化すが、事なきを得たとほっとした瞬間、風がベラの髪を舞い上げて、その匂いが彼らの鼻に届いてしまう・・・。
 
ベラとエドワードの幸福な時間を象徴した森での「上からショット」に対し、ここでは三人の吸血鬼の恐ろしさや力を示す、「下からショット」が採用される(※これもきっと他の言い方が)。緊迫した状況への切り替えや、ベラの香りを敵に届けてしまう風の場面など、随所に動きがあって観ていて飽きない。
 
f:id:yanagiyashujin:20190404173933j:image
 
f:id:yanagiyashujin:20190404173938j:image
下からショット。
 
2作目以降は話が複雑化するためか(いや大して複雑ではないのだけど)、1のように贅沢に遊びに時間を割くことも減り、忙しなくストーリーを追うこととなる。そのストーリーは予想を裏切らず至極王道、ベラが吸血鬼になるならないで揉めたり、ベラのためにエドワードが姿を消したり、吸血鬼の天敵、人狼の少年が横恋慕してきたり、そんなんの繰り返しだったと思う。もっとカレン家の他のメンバーに焦点当てたら良かったけどな。ベラとエドワードより、アリスとジャスパーの馴れ初めが見たい。
 
ベラが最後吸血鬼になるのかは・・・忘れた。