Yayga!

イェイガ!(Yay!+映画)- 叫びたくなるような映画への思いを書き殴ります

『踊る大捜査線 THE MOVIE』を書こうと思ったが無理だった

小三の娘に「何か面白い映画とかドラマない~?」と言われ、踊る大捜査線のドラマを観せたら、見事にハマッてしまいました。スペシャルドラマ2本と映画まで完走し、「室井さん大好き♡」と騒いでいる。前からちょっとシブ好みで・・・仲良しの友達の間で何かが流行っていても、あまり影響されることもなく、今はシャーロック・ホームズに夢中で図書館に通っているし。流行っているものって、例えば鬼滅の刃ね。すごいの、小学生の鬼滅への熱狂っぷり。

『踊る・・・』は私も久々に観たら、やっぱりすごく面白かったので、踊る大捜査線 THE MOVIEの感想でも書いてみよかー、と思いました。

 

 

◇それで、ふと思い出した

踊る大捜査線』のドラマがやっていた頃、私は大学生で。家庭の事情により私大の二年生の時から、学費は奨学金、交通費始め雑費はバイト代で賄わなければならず、バイトを掛け持ちするハードな毎日を送っていた。
読者の方はご存知の通り、私は今でこそ菩薩のように穏やかな人物だが、当時は人並みにイキった学生だった。特にまあ、学費を自分で稼がなければならなくなったのは父親の事業の失敗と借金が原因だったため、お金の心配のない周囲の連中に比べたら「私は自立してるんやで」みたいなヘンな自尊心と意地があったわけ。

その日も、ようやくバイトを終え、夜11時くらいに自転車で帰っていた。確か、真冬の寒い日だった。すると交番の前で、警官二人に止められた。「ごめんねー、防犯週間でさ、自転車を調べさせてもらってるんだ。協力お願いできるかな?」。イキってはいたが根は超素直な私は、(所轄、所轄だわ。いや所轄っていうか交番勤務のお巡りさんね。ご苦労さまですー)とか考えて、「はい、もちろんです。寒いのに大変ですね」と和やかに応じた。

ところで、この自転車は、昼のバイト先である文房具店の仲間、笹野くんにもらったものだった。先に雇い主の話をすると、ここの店長がクセは強いが男気のある人で、過去には中国人留学生を自宅に下宿させたり、親の借金を息子の元に取り立てに来た金融業者を一喝して追っ払ったりなどの武勇伝を持ち、バイトの学生のことを家族のように気にかけてくれた。私の事情を知ったとき、「学費は俺が払ってやる、返さなくていい」と言われたのが忘れられない。今は年賀状のやり取りのみ、ヤバイ、そろそろ会っておかないと訃報が入るかもしれん。

歯に衣着せない人だったので、合わない子はすぐに辞めたが、一度定着した学生は全員卒業までバイトを続けたし、皆とっても仲が良かった。笹野くんは、私の一年後に入ってくると素直さと献身的な働きぶりでたちまち店長の女房役になり、ほぼ毎日シフトに入っていた。たまにいたでしょ、無理なく懐が深くて、例えば女子の集団の中に一人でいても違和感がなくて、恋愛相談から生理の話まで平気でされてしまうが下心はなく、ちゃんとした彼女がいる男子。

彼も状況を知って何かと気にかけてくれ、私の自転車が壊れたときに、「僕が使っているのでよければ」と譲ってくれたのだ。

 

 

◇話は交番前に戻ります

さて、自転車に跨ったまま、警官から「協力ありがとうね」と言われるのを待っていた私。ところが、二人は何やら無線で話したり書類を繰ったりしている。そしてこちらに向かってきたときには空気は一変し、「はい、アウト。この自転車ねー、盗難届が出てるんだよね」とものすごく高圧的に言われた。

身分証を出せと言われて学生証を出すと、この時間まで何をしていたかなど色々と詰問される。思いもかけないことに怖くなって手も震えてしまい、自転車は友達にもらったこと、その友達は絶対に物を盗むような人ではないということを一所懸命説明した。
二人は全く信じず、「盗難届出てんの、嘘はやめなさい」「大体ちゃんとした学生なら、こんな時間にフラフラしてるのおかしいでしょ」と鼻で笑ってくる。

いくら訴えてもラチが明かない。
で、まあ・・・。あまりに二人の態度が横柄で犯罪者扱いしてくるもので、震えを通り越して、ものすごくムカついてきたわけだ。スッと頭が冷えて心が決まる感じね。

「わかりました、どこかに出頭すればいいんですか?どこですか、何日の何時に行けばいいですか?でも、とりあえず母が帰宅が遅くて心配していると思うので、電話してもいいですか?」と自宅に電話。応じた母に、超デカイ声で言った。

 

「あ、お母さん?ごめんね、心配してたでしょう?今、自転車泥棒に間違われて職質受けてんのよ、そうそうそう、こっちの話も聞かずに完全に犯罪者扱い。ねえ、『踊る大捜査線』でおまわりさんは市民の味方って言ってたけど、全然そうじゃないのねえ!?超~横柄、超~えらそう!こうなったら徹底的にやってくるんで。朝になっても心配しないでね」

 

警官たちはドン引いており、「と、とにかく寒いから交番に入りなさい」と言ってきたので、「結構です、何か盗んじゃうかもしれないじゃないですか、手癖わるいんで!と返したら、「そんなこと言わないで」とか宥めてきやがる!扱いかねたらしい二人は、「じゃあ、その自転車をくれた友達に話を聞けないか」と妥協案を出した。11時半を過ぎていたが、私は笹野くんに電話し、母に話したのと同様に事情を説明、笹野くんは「とにかく今から、そこに行きますんで!」と言ってくれた。

この時点で、警官二人は「アレ、これ多分、違うな・・・」と感じていたと思うのだが、私はイライラしてダンダン足踏みしているし、まあ、あちらも引っ込みがつかなかったのだろうね。やがて笹野くんが、ホテホテホテーと夜道を歩いてきて、私と警官を見ると手を振り、「あ、やなぎやさん、これ、こないだ彼女と旅行行ってきたのでお土産です」と金魚のキーホルダーをくれた。

 

「・・・」。静まりかえる現場。

 

お巡りの一人が咳払いをし、「えーっと、笹野くんね、今話は聞いたけど、もう一度確認してもいいかな」。笹野くんは、自転車は一年前にホームセンターで購入したこと、盗難届が出ている原因は全く思い当たらないことを丁寧に説明し、「でも、確かにホームセンターで僕が防犯登録をしたか、と言われると記憶になくて・・・すみません」と誠実に頭を下げた。
お巡りは頷き、「じゃあ、今回は笹野くんに免じてね、君を信じるので、お咎めなしとしましょう」とか言った。
完全に頭にキていた私は、「はあ?すみませんねー!わたしは信用ならない人物で!盗難届けは、どおなったのでしょおかぁ??」と暴れたが、笹野くんは私を「やなぎやさん、まあまあまあ。どこかで行き違いがあっただけですから」と押しとどめ、夜も遅いからと自宅まで送ってくれたのだった。。。

 

いやあ・・・。笹野くんにはホントにすまなかった。

 

母はいまだに、「あの時の、あーちゃん(私)怖かったわぁ」という。 

ちなみに文房具屋のバイトに対して「夜のバイト」と家族に呼ばれていたレンタルビデオ屋は、今ではとんと見かけなくなった、カーテンの向こうにアダルトコーナーがあるような怪しげなビデオ屋で、バイトの連中も治安が悪かった。私の他は男子三人、それぞれキャラがめっちゃ濃く、特に一人が東大卒のフリーター、パチンコで生計を立てている変わり種で。そのようなことを知ったのも後日、何故なら始めの一か月くらいは、シフトで一緒になっても、ビデオの棚に隠れてこちらに姿を見せないほどの異常な人見知りだったからだ。また、お茶に見せかけた酒をペットボトルに入れてこっそり飲んでいた。二か月目になったら、迷子のキツネリスのように一歩ずつ出てきて、最後は割と仲良かったけど。漢詩について延々語ったり、激烈に頭のいい変態だった。


しかし、『踊る大捜査線』はやっぱりドラマの方が面白いよね。じゃあ、みんな、暑さで倒れるなよ!